こんにちは。
筆者は「すしログ」という鮨専門サイトを運営しつつ、国内外の料理を食べ歩いて20年の「食の変態」大谷だ。
食のために世界を放浪し、石毛直道先生を敬愛して文化人類学を専攻。食べ歩くだけではなく自ら料理することを是としている。
今回ご紹介する「銀座デリー」は、言わずと知れた「カシミールカレー」の聖地である。
しかし「カシミールカレー」や同じく人気の「コルマカレー」以外にも、魅力的なヨーグルトを用いたカレーが存在することはあまりフィーチャーされない。
本記事では、世にある多くのデリーの記事とは打って変わり、ヨーグルト料理に着目してみたい。
なお、コンビニのフェアでも人気な「カシミールカレー」は、今やカレーマニア以外の知名度も高いが、簡単に言うと「黒っぽくて激辛なシャバシャバのカレー」だ。
「カシミールカレー」は、インドのカシミール地方には存在しない「デリー」オリジナルのカレーである。
命名のエピソードは印象深い。いわく、創業者の田中敏夫さんにとって「辛いカレー」と言えば南インド「マドラス」のカレーだったため、当初は「マドラスカレー」に命名すると決めていたそうだが、印刷物の原稿を間違えて「カシミールカレー」と書いてしまったとのこと。
ただ、それほど影響はないだろうと判断して訂正せず、今に至るそうだ。…昭和のゆるやかな雰囲気を感じさせるエピソードだ。
(カシミールカレーができるまで/カレーとインド・パキスタン料理専門店 デリー)
それでは、「銀座デリー」のヨーグルト料理たちの魅力を、お伝えしよう。
「銀座デリー」のヨーグルト料理とは?
「デリー」の創業は1956年(昭和31年)にさかのぼる。
創業当時のメニューは3種類で「チキンカレー」「ポークカレー」「インドカレー」だった。その後「カシミールカレー」が生み出されたのは上述のとおり。
現在のカレーメニューは上野店と銀座店を合わせて16種類にも及ぶ。
メニューにはその一部が、あたかもパレットの絵の具のように並んでいてワクワク感が高まる。
また、銀座店には他にも魅力的なサイドメニューやメインディッシュが多数あるので、ヨーグルト料理が着目されることは稀だろう。
しかし、以下の通りヨーグルト料理が充実している(コロン以下は構成要素)。
- タンドーリチキン:13種類のスパイス、自家製ヨーグルト
- ベジタブルカレー:青唐辛子、ココナッツ、自家製ヨーグルト
- バターチキンカレー:バター、トマト、タンドーリチキン用のヨーグルトのマリネソース
- ダヒ:自家製ヨーグルト、マンゴーソース
今回は上記のヨーグルト料理に定番の「カシミールカレー」と、カレーマニアの支持があつい「コルマカレー」を加えたレポートをお届けする。今だからこそ、「銀座デリー」の新たな魅力が多くの人に伝われば幸いだ。
タンドリーチキンにダヒ!「銀座デリー」のヨーグルト料理を紹介!
今回、「銀座デリー」で頂いた料理は下記のとおりだ。
- タンドーリチキン(ハーフサイズ):1,200円
- カレー3種セット:2,400円
【セット】ベジタブルカレー(単品は1,220円)
【セット】バターチキンカレー(単品は1,350円)
【セット】コルマカレー(単品は1,300円) - カシミールカレー:1,200円
- ライス:220円
- ダヒ:550円
なお、銀座店には魅力的な「サフランライス」もあるが、「カシミールカレー」に合わせるため敢えて日本のお米を選択した。
上述のサイトで下記のように記載されているため、創業者の思想を尊重した次第である。
米ーの辛さと絡み合うことで、ただ辛いだけではない奥行きが生まれ、このとき、本当の意味で「日本の米に合うインドカレー」が完成したと言えるだろう。
「13種類のスパイスと自家製ヨーグルトに2日間漬け込んだ骨付き鶏肉」。
一般的なインド料理のタンドリーチキンとは異なり、漬け込んだマリネソースごと鉄板で焼くスタイルだ。
調理方法だけでなく味わいも完全にオリジナルで、スパイスの複雑な香りにヨーグルトの酸味が爽快だ!他のどこにもないタンドリーチキンである。
ヨーグルトのコクも十分に活きているように感じる。
肉は柔らかく、ホロホロ、しっとりしていて、ジューシィだ。
これは兎に角コクが凄いオリジナルタンドリーチキン。「ヨーグルト凄い!」と心の中でシャウトするメニューである。
今回のコンセプトを持たなければ、一生食べていなかったかもしれない。良かった…不幸を回避できて…。
そのように思う程に秀逸なカレーだ。
お店の説明によると「青唐辛子、ココナッツ、ヨーグルトで作った南インド風の辛口野菜カレー」とのこと。
この説明書きだけではイメージが付きにくいが、これまた完全にオリジナルなカレー。
サッパリだが、コクがある!爽やかな青唐辛子の香りと辛味が初手からハートを鷲掴み。
そして、ココナッツの風味とシャリシャリした食感が辛味に寄り添う。辛いだけでなく玉ねぎの甘味が辛味を支える。爽やかながらコクがあるのはヨーグルトのお陰だろう。
ヨーグルトの酸味はないので、コクとして活かしているように感じる。
また、時折テンパリング(焼き戻し作業のこと)したクミンシードがアクセントになる。
「デリー」にホールスパイスをテンパリングするイメージがなかったので、サプライズであった。
これも此処にしかないカレーで、かなり大ヒットだ。独特で美味しい。使用している野菜は、カリフラワー、オクラ、ジャガイモ。
「タマネギを使わず、バターとトマト、そしてタンドーリチキン用のヨーグルトのマリネソースで作ったカレー」とのこと。
一般的なバターチキンカレーは濃度が高く、食後感がズッシリする事もあるが、「銀座デリー」のものは異なる。ヨーグルトの酸味が活きる独特のバタチキだ。
香りで特徴的なスパイスはカスリメティで、バシッと香る。
そして、トマトの酸味や甘味もありつつ、油脂は軽め。コクがありつつ後味が軽やかなバタチキである。
「限界まで炒めたタマネギと、香りのあるスパイスとの組み合わせが絶妙」と謳う通り。
玉ねぎの甘味と旨味が濃密に溶け込んでいて、香りも良い。メイラード反応由来の香りが食欲をそそる。
そして、酸味と辛味と甘味のバランスを取る味覚設計にも目をみはるものがある。カレーマニアにファンが多いのも納得だ。
デリーの代名詞であり、いつ頂いても貫禄ある味わいだ。
激辛好きでも辛いと思う程の激辛と甘味、コク、酸味、苦味、香ばしさなどの多重奏!激辛なのに後を引くのは複雑な味わいのお陰だ。
どことなくウスターソースを感じさせる激辛カレーで、系譜以外のお店には生み出せない名物カレーだ。
ヨーグルト系のカレーの後に頂くと印象がガラリと変わるので、お店の異なる表情を同時に楽しむ事ができる。味覚のバリエーションが豊かなカレーをそろえる「銀座デリー」ならではの贅沢な楽しみ方だ。
自家製のヨーグルトにマンゴーソースを掛けている。
自家製ヨーグルトは酸味が強く、粘度は高くなく、さらりとした味わいのヨーグルトだ。
実にスッキリしたヨーグルトで、マンゴーソースはたっぷり掛けられているが、ヨーグルトがスッキリ味なので、爽やかに感じる。
これは辛いカレーの後に最適で、口の中の辛味が一瞬で引いていく。
辛さのレベルが高いカレーを食べた方は、是非とも試して欲しい(量が多めなので、2人でシェアがベター)。
「銀座デリー」はビルに入っているため、少し分かりづらいかもしれないが、入り口にあるこの看板を覚えておけば一発で分かるだろう。素敵な笑顔。
銀座店はテーブル席が多く、湯島の本店(上野店)よりも格段に落ち着く雰囲気だ。
筆者は上野店しか訪問したことがなかったので、落ち着いて「デリー」のカレーを頂ける銀座店は今後も訪問しようと強く思った。
上野店は行列する上にカウンター席がメインなので、どうしてもファストフード的に頂くことになる。
料理は落ち着いて頂くかどうかで味の印象が変わるものなので、上野店しか行ったことがない方は銀座店にも訪問してほしい。
銀座店は「デリー」ファンでも訪問する価値があると言える。デリー流のヨーグルト使いに魅了されるはずだ。
銀座デリー
住所:東京都中央区銀座6-3-11 西銀座ビル3F
電話番号:03-3571-7895
予約可否:予約可
営業時間:
【月~金】11:30~21:30(L.O)
【土日祝】11:50~21:30(L.O)
【平日ランチタイム】11:30~14:00
定休日:定休日無し、年末年始休暇(12/30~1/1)
お店の公式サイト
http://www.delhi.co.jp/