ヨーグルト“愛”レシピコンテスト SNS審査&一般審査員募集!

みんなのヨーグルトアカデミー

ヨーグルト好きによる、ヨーグルト好きのための、日本一ヨーグルトに詳しいWEBメディア!ヨーグルト好きによる、ヨーグルト好きのための、
日本一ヨーグルトに詳しいWEBメディア!

SNS審査&一般審査員募集!

ウクライナ出身の方も太鼓判を押すレストラン!代々木公園「ベトラーヴ ビストロ ジロー」~ヨーグルトに似たサワークリーム「スメタナ」とは?~

外で食べる 2023.05.20

ウクライナ出身の方も太鼓判を押すレストラン!代々木公園「ベトラーヴ ビストロ ジロー」~ヨーグルトに似たサワークリーム「スメタナ」とは?~

こんにちは。筆者は「すしログ」という鮨専門サイトを運営しつつ、国内外の料理を食べ歩いて20年の「食の変態」大谷だ。食のために世界を放浪し、石毛直道先生を敬愛して文化人類学を専攻。食べ歩くだけではなく自ら料理することを是としている。

今回ご紹介する「ベトラーヴ ビストロ ジロー(Betterave Bistro Jiro)」は、代々木公園にあるウクライナ料理のレストランである。

ウクライナ料理はヨーグルトに非常に似ている乳製品「スメタナ」を多用する料理だ。
そして、「ヨーグルトの父」と呼ばれる著名な学者、イリヤ・イリイチ・メチニコフ博士の生誕の地でもある。ようは、ヨーグルト料理好きならば外せないのがウクライナ料理だと言える。

そして「ベトラーヴ ビストロ ジロー」は本格的で美味しいウクライナ料理を提供しており、ウクライナ出身の方も太鼓判を押すお店だ。大多数の日本人にとってウクライナ料理はイメージが沸きにくい料理かもしれないが、きっと琴線に触れるだろう。

2022年夏には、ウクライナ料理の「ボルシチ」がユネスコの無形文化遺産に登録された。
「ボルシチ」は日本だとロシア料理の代名詞のように思われがちだが、実はウクライナが発祥とされる。
登録の理由は、戦争によって「ボルシチ」が失われる可能性が懸念されたためだ。本記事に巡り合った読者の方も、ウクライナを知るために、ウクライナ料理を食べてみてはいかがだろうか?

自身の経験則から、料理を知れば、その国自体への関心が高まり、親近感が湧いてくる。料理は文化の架け橋となる素晴らしきノンバーバルコミュニケーションだ。

それでは「ベトラーヴ ビストロ ジロー」ならびにウクライナ料理の魅力をお伝えしよう。

ウクライナ料理の特徴と「ヨーグルトの父」メチニコフ博士について

ウクライナ料理の特徴と「ヨーグルトの父」メチニコフ博士について

ウクライナ料理とヨーグルトの関わりについて述べるならば、乳製品「スメタナ」とイリヤ・イリイチ・メチニコフ博士に言及せざるを得ない。

メチニコフ博士は現在のウクライナ、ハルキウ近くの村で生まれたロシア人で、1908年にノーベル生理学・医学賞を受賞した学者だ。
20世紀初頭にブルガリアに旅行した折に、ヨーグルトの健康機能に着目する。そして「ヨーグルトが長寿に有用である」という説を唱えた。
メチニコフ博士は42歳から71歳までパリに住んでいたため、博士の主張がヨーロッパにヨーグルトが普及するきっかけとなったのだ。
現在の学説ではヨーグルトと長寿の関連性は証明されていないが、健康面で様々な効能があることは周知の事実である。そして、日本でもヨーグルトがお馴染みになっていることは、メチニコフ博士のおかげと言えるかもしれない。

そして「スメタナ」は、ウクライナ料理と切っても切り離せない調味料だ。ハーブの「ディル」、根菜の「ビーツ」と並んで、ウクライナ料理に「必須の食材」とされている。
「スメタナ」は日本ではサワークリームで代用されることが多いが、日本で一般的に販売されているサワークリームとは異なる。

大きな違いが乳脂肪分で、日本で一般的なサワークリームが40%のところ、ウクライナのスメタナは20%~30%程度に留まる。よって、粘度やテクスチャーに違いが見られる。

日本では生クリームとヨーグルトを混ぜると「スメタナ」に近い味わいになると言われている。実際に「ベトラーヴ ビストロ ジロー」で頂いたものは、そのような味わいであった。つまり、ミルキーなフレイバーを持ち、濃密なコクとサッパリした軽い酸味をあわせ持つ味わいだ。

次に、代表的なウクライナ料理を見てみよう。以下のようなものが挙げられる。

  • ボルシチ
  • ビネグレェト(ジャガイモとビーツのサラダ)
  • ジュルーニ(ウクライナ風ハッシュドポテト)
  • ヴァレーヌィク(ウクライナ風餃子)
  • クルシェニキ(キノコの牛肉巻き)
  • サーロ(豚肉の脂身の塩漬け)
  • キーウ風カツレツ
  • ゴルブッツィ(ウクライナ風ロールキャベツ)
  • スヴィニーナ(牛肉のソテー、オムレツ乗せ)
  • ピロシキ

「ボルシチ」は「酸っぱいスープ」を意味する野菜のスープだ。日本人にとっての味噌汁のようなスープ、と形容されることが多い。「ベトラーヴ ビストロ ジロー」のマダムも、そのように説明された。

また、お話をお伺いして食文化、調理法として興味深かったのが保存食だ。
冬は野菜が全くないので、酸味や塩気を効かせて保存食にするそうだ。

保存食は長い歴史をもとに培われた地域住民の叡智である。物流が進歩した現在でも郷土性を楽しむことが出来るのが、保存食だ。

「ベトラーヴ ビストロ ジロー」の飯島二郎シェフについて

ベトラーヴ ビストロ ジロー

「ベトラーヴ ビストロ ジロー」は2011年2月にオープンした。
オーナーシェフは日本人で、飯島二郎さんだ。フレンチから修業を開始した後、26歳で在ウクライナ日本大使館の公邸料理人(料理長)となり、ウクライナに3年間滞在されたそうだ。
そして、日本にウクライナ料理を広めたいと思い立ち、ウクライナ料理を提供するビストロを開業されたとの談だ。

店名の「ベトラーヴ」は、フランス語で「ビーツ」を意味する。
「ベトラーヴ ビストロ ジロー」では、店名が示すとおり、飯島シェフのキャリアの原点であるフランス料理とウクライナ料理をともに提供されている。

さらに、店内のメニューを見ると日本各地の魚介類を多用されていて、食材も気にかけておられるのが分かる。

「ベトラーヴ ビストロ ジロー」のお料理を紹介!

「ベトラーヴ ビストロ ジロー」はアラカルトでの注文も可能だが、ウクライナ料理を堪能したい方は「Bistro Jiro ウクライナコース」5,500円を予約するのが望ましい。

このコースでは代表的なウクライナ料理と「スメタナ」を満喫することができる。

「Bistro Jiro ウクライナコース」の内容

  • "ザクスカ" ウクライナ風色々前菜の盛り合わせ
  • "ボールシュチュ" ウクライナ風ボルシチ
  • "プィリジキ" ピロシキ
  • "Nalysnyky" 具材の入った焼きクレープ
  • "ゴルブッツィ" ウクライナ風ロールキャベツ or キーウ風カツレツ

「キーウ風カツレツ」はプラス1,100円で変更が可能で、事前の予約制だ。
2人でお伺いする場合、「ゴルブッツィ」と1つずつお願いすることも可能である。

それでは「Bistro Jiro ウクライナコース」の詳細を紹介する。

"ザクスカ"「ウクライナ風色々前菜の盛り合わせ」は、複数のお皿で次々と提供されるのが嬉しい。
内容は「ウクライナ風ポテトサラダ」「砂肝のコンフィ」「ローストビーフのキュウリ巻き」「紫キャベツのマリネ」「人参・キャベツ・ツナのマリネ」「キノコと玉ねぎのマリネ」「キャヴィアとスメタナ」「スモークサーモン」と、種々多様だ。

ウクライナ風ポテトサラダ
ウクライナ風ポテトサラダ

まず、ピンク色の見た目が美しい。そして、いざ味わうとビーツのほのかな甘味が特徴的で、未体験の味わいのポテトサラダだ。
サラダの上に乗っているのは、玉子とディルだ。

ローストビーフのキュウリ巻き、砂肝のコンフィ
ローストビーフのキュウリ巻き、砂肝のコンフィ

「ローストビーフのキュウリ巻き」は、「スメタナ」とともにいただく。
予想外に塩気がアッサリしていて、ローストビーフとしてはサッパリ味だ。さらに「スメタナ」の酸味が爽やか。キュウリと魅力的に調和する。

写真奥の「砂肝のコンフィ」は、黒オリーブとともに。
砂肝はしっとりしていて、スッと歯切れが良く、コリッとした軽い食感も楽しませてくれる。

紫キャベツのマリネ、人参・キャベツ・ツナのマリネ、キノコと玉ねぎのマリネ
紫キャベツのマリネ、人参・キャベツ・ツナのマリネ、キノコと玉ねぎのマリネ

紫キャベツには酸味をしっかりと効かせている。他の料理にコクや甘味があるため、味覚的なバランスが非常に良い。
同じタイミングで訪問されていたアメリカ人男性は「酸っぱい!」と笑っていたが、お酢に慣れている日本人ならば爽やかに感じるのではないかと思う。

キャヴィアとスメタナ、スモークサーモン
キャヴィアとスメタナ、スモークサーモン

キャヴィアと「スメタナ」を合わせるとは、郷土性があって嬉しい組み合わせだ。「スメタナ」は濃密でクリーミー。キャヴィアと自然に調和する。
スモークサーモンは恐らく自家製と思われ、肉厚でみっちりした食感で美味しい。

“ボールシュチュ” ウクライナ風ボルシチ
"ボールシュチュ" ウクライナ風ボルシチ

仕上げにかけられたガーリックオイルの香りが食欲をそそる。
見た目からするとトマトが主体のように思われるが、頂いてみるとビーツもたっぷり使われていることが分かる。

ビーツの甘みとトマトの酸味が魅力的な組み合わせだ。そこに「スメタナ」のコクと優しい酸味が馴染む。頂くだけで元気になりそうな味の、具だくさんスープだ。

ほろほろに煮込まれた豚肉も入っていて、出汁も豚とのことである。
ウクライナのボルシチは、出汁は豚か牛が一般的らしい。しかし、現地の牛は肉のほとんどが赤身で、肉質が硬いため、日本人にとっては豚の方が美味しいだろうと考えて豚肉を使用されているそうだ。

“プィリジキ” ピロシキ
"プィリジキ" ピロシキ

「えっ、これがピロシキ?」と思うことだろう。味わいとしても意表をつかれる。柔らかくふわっとした食感で、甘味がある。

これは、日本人が慣れ親しんだ味のパンだ。日本で「ピロシキ」と言えば、具を詰めた揚げたピロシキが有名だが、ピロシキ用の生地を用いたパンもピロシキと呼ばれ、パンとは一線を引かれるそうだ。

その理由は、ウクライナのパンは「黒パン」が主流であるためだ。
「黒パン」にはライ麦が使用され、通常のパンとは異なる発酵(サワー種)を加えるため、ピロシキとは全く別の味わいなのだ。

確かに、ボルシチにはピロシキの方が格段に合う…と感じた。

極めて柔らかいピロシキは瞬時にスープを吸い込み、パンの甘味がスープに合う。マダムはウクライナに住み始めた頃、このタイプのピロシキを食べて、日本のパンを思い出し懐かしく感じたそうだ。

ちなみに、フランス料理やイタリア料理では、コースの中に提供されるパンを一気に食べないものだが、「ベトラーヴ ビストロ ジロー」のピロシキはボルシチと合わせて提供される。残しておく必要はないので、ボルシチと一緒に楽しもう。

“Nalysnyky” 具材の入った焼きクレープ
"Nalysnyky" 具材の入った焼きクレープ

揚げ春巻きのような見た目だが、焼いたクレープである。
口に運ぶとズッキーニとピーマンの香りがふわっと漂い、生地の香りとともにホッとする。生地には甘味が効いていて正にクレープだ。

ズッキーニとピーマンだけでなく、甘味のある大根、玉ねぎ、挽き肉などが詰められていて具だくさんだ。この料理についても、「スメタナ」の酸味が絶妙な相性を示す。

“Main Dish” ウクライナ風ロールキャベツ
"Main Dish" ウクライナ風ロールキャベツ

ウクライナ料理で非常に有名な一品が"ゴルブッツィ"だ。

ゴルブッツィ

中に詰められた豚肉の旨味とトマトソースが、素朴ながらに味わい深い組み合わせだ。
トマトソースは軽くとろみを帯びている。ズッキーニ、パプリカなど、ソースにも野菜がたっぷりだ。

キーウ風カツレツ
キーウ風カツレツ

つるり、ころんとした見た目に期待が高まる。そして、ナイフを入れると「おお〜!」と思うこと間違いなしだ。

キーウ風カツレツ

中から緑色の鮮やかなソースが溢れ出る。恐らく発酵バターを使用し、ディルとパセリを混ぜているように思われる。

コクと爽やかな香りが一体化している。このソースは添えられたレモンとの相性も良い。肉は鶏肉のミンチで、しっとりした食感の中に鶏のコクがある。

鶏肉なので重たすぎず、上品な味わいのバランスだ。添えられているジャガイモは濃密で甘い(熟成させたインカのめざめのよう)。

メインの「ゴルブッツィ」も「キーウ風カツレツ」も後味がサッパリしている。塩気と油脂の両方が軽いので、食後感がスッキリしつつ、満足感のあるコースであると感じた。

最後に、ワインについては、ボトルは各国のものを揃えていて、グラスワインはアメリカ産とモルドバ産の二本立てだ。モルドバはウクライナの隣国。せっかくなので白、赤ともにモルドバワインを選んだところ、個性的な味わいで魅力的であった。

  • Radacini Vintage Chardonnay 880円
  • Radacini Cabernet Sauvignon 880円
Radacini Vintage Chardonnay
Radacini Vintage Chardonnay

シャルドネながらスッキリした酸味がグレープフルーツ的な印象で、樽香もしっかりと感じられる。

Radacini Cabernet Sauvignon
Radacini Cabernet Sauvignon

赤はバニラ的な香りと樽香が調和して個性的な香り。キリッとした苦味と枯れ葉のようなアフターフレイバーが味わい深い。

人気を博しているので、事前の予約は必須だ。

ベトラーヴ ビストロ ジロー

住所:東京都渋谷区富ヶ谷1-10-5 パークサイドコグレ1F
電話番号:03-5790-9466
予約可否:予約可
営業時間:17:00〜23:00(LO. 22:00)
定休日:日曜
お店の公式サイト
http://bistro-jiro.jp/

記事を書いた人

大谷悠也
大谷悠也

鮨研究家、文筆家、ブロガー。鮨の人気を高めるべく「すしログ」を運営し、全国を精力的に回る。鮨に限らず、旺盛な食欲と好奇心を腹に、日本国内外で6,000軒以上の飲食店を訪問。市場や生産者、醸造家のもとに足を運び、自ら調理も行う。

すしログ
https://sushi-blog.com/