ブルガリアには行ったことがなくても、「ブルガリアヨーグルト」のおかげでほとんどの日本人が知っている国、ブルガリア。
しかし実際のところ、ブルガリア人は、本当にヨーグルトを食べているのでしょうか!?
「みんなのヨーグルトアカデミー」編集部は6月上旬、ついにヨーグルトの本場、ブルガリア共和国へ渡航。ヨーグルトをとことん深掘りしてきました!
そもそもブルガリアってどこにあるの?
国名は知っていても、世界地図を見て「どこですか?」と聞かれると、ぱっと思い出せないのがブルガリアの位置関係。
地図を見ると、北はルーマニア、南はギリシャとトルコに挟まれ、ヨーロッパの南東部、地中海と黒海の間に突き出たバルカン半島の東部に位置することがわかります。
歴史を振り返ると、第一次ブルガリア帝国ができたのは681年、日本における飛鳥時代のことでした。
しかし、バルカン半島のなかでも自然に恵まれた魅力的なエリアだったブルガリアは、幾度も独立を侵されてしまいます。
のちに王国として再び独立を果たしたのは1908年のこと。1940年代の共産主義国を経て、1989年には東欧革命を機に民主化。2007年にEUに加盟しています。
120年前、ブルガリアがヨーグルトで有名になった理由とは?
そんなブルガリアとヨーグルトの関係は、紀元前4000年頃、古代東ヨーロッパのバルカン半島周辺に住んでいたトラキア人がもたらしたもの。彼らがヨーグルトを作り始め、その食文化がブルガリア人に引き継がれたといわれています。
ヨーグルトそのものは、モンゴルやインド、トルコなど、各地で保存食として作られていますが、世界にブルガリアヨーグルトが知られるきっかけになったのは1908年のこと。
当時、免疫や老化と腸の関係について研究していたウクライナ出身の免疫学者で、のちのノーベル賞受賞者でもあるイリヤ・メチニコフが、「ブルガリアの人々の健康長寿は、乳酸菌を含むヨーグルトを食べる習慣がに関係している」という「不老長寿説」を発表し、その影響が欧米にも広まったのです。
選べる贅沢!ヨーグルト売り場は日本の約3倍
では、現代のブルガリアではヨーグルトがどのように親しまれているのでしょうか。
まずはスーパーマーケットを訪れてみると、売り場が大きい!地元ブルガリア資本のスーパーでも、ドイツをはじめとするユーロ圏のチェーンスーパーでも、ヨーグルト売り場は通路1列分を占めています。面積は日本の3倍以上ありますね。
品揃えは、フルーツやジャム入りの甘いヨーグルトは全体の3分の1ほど。とにかく地元メーカーのプレーンヨーグルトの充実ぶりには目を見張ります。
そしてそのほとんどが、ブルガリア菌とサーモフィラス菌で作った正真正銘の“ブルガリアヨーグルト”。乳酸菌違いのヨーグルトが並ぶ日本の売り場とは全く違いますね。
最も種類が多いのは400gパックで、日本円で100~150円弱、BIOブランドは同量で250円ほど。円安の影響か、店頭価格は日本とあまり変わりませんが、1kgのバケツ入りが400円台となると、いかに日常食であるかわかります。
そして、プレーンヨーグルトの分類はヨーグルトの国ならでは!まず、原料となる生乳の種類が選べます。牛、羊、山羊、そして水牛……。基本的には牛のものが多いですが、乳脂肪分が高く濃厚な羊乳のヨーグルトもたくさん流通しています。
私も羊のヨーグルトを何種類か食べてみました。少しクセはありますので好みによりますが、濃厚さと酸味のバランスがよく、とても美味しかったです。
また牛乳で作ったヨーグルトは、乳脂肪分0.1%~4.5%の間で、同じメーカーでも3〜4種類の商品が選べるのが標準的。
その他、カイマックがあるヨーグルトは、パッケージにも大きく表記されているのも目に留まりました。
カイマックとは、ヨーグルトの上部にあるクリーム層のこと。日本のご当地ヨーグルトなどにもありますが、生乳の脂肪球を均一化するホモジナイズという工程を経ていない「ノンホモ生乳」を使うと、このクリーム層ができるのです。食味の観点からも選べる選択肢が多いのだなと感じました。
国家基準を満たす「БДС」マーク付きのヨーグルトとは?
また、ブルガリアには国立標準化機構「「БДС(BDS:Bulgarian Institute for Standardization)」という期間があり、国家レベルで必要な規格の開発や承認、発行などを行う機関で、ヨーグルトの規格を出しています。
この基準を満たしたヨーグルトには、「БДС」の認定マークがつき、国が認めた“ブルガリアヨーグルト”ということになります。基準の一例は、
- 遺伝子組み換えしていないブルガリアの地に育つブルガリア菌とサーモフィラス菌を種菌とする
- 防腐剤、安定剤、乳化剤を使用していない
- 規定の製造プロセスをクリアした高品質の製品を保証している
- 粘度がある ※羊乳と水牛乳ではわずかに粒がある
- 使用する生乳の種類による特有の心地よい乳酸の香りある
などなど。原料乳による状態の違いにも言及しているのがブルガリアらしいところですね。
また、スーパーや小売店だけでなく、レストランやカフェでもヨーグルトを使ったさまざまな料理がありました。なかには、一見ヨーグルト料理に見えなくても、ヨーグルトが隠し味になっている料理も多々。
そこで後編では、「やっぱりブルガリアはヨーグルトの国!」と感じた、ブルガリアの個性あふれるヨーグルト料理と、家庭の手作りヨーグルト、ブルガリア人のヨーグルト観についてご紹介します。
[参照]
- Wikipedia「Bulgaria ヨーグルトにおける国立標準化機構」