お待たせしました。ブルガリア現地レポートの後編です。前編はブルガリアという国の成り立ちから、スーパーなどで買える商品をご紹介しましたが、後編はブルガリアのヨーグルト料理から、ブルガリア人のヨーグルト観を探っていきます。
さすが「ヨーグルトの国」ブルガリア!どんな料理にもヨーグルトがそこに!
スーパーに並ぶヨーグルトの数もさることながら、やはり「ブルガリアはヨーグルトの国」と思わせてくれたのは、レストランで食べた数々のヨーグルトを使った料理です。
オーソドックスなブルガリアの伝統料理はもちろん、若い人たちでにぎわうファミリーレストランではイタリアンや巻き寿司を含む各国料理、そして伝統料理を“発酵”という食トレンドと掛け合わせた料理など…。
どんなスタイルの店に行っても、どんな料理を頼んでも、ヨーグルトは姿かたちを変えていつもそこにいる、という感じです(笑)。
特にグリルした肉料理や揚げ物も多いのですが、ハーブやニンニクがきいたヨーグルトソースと一緒にすることでぺろりと食べられてしまいます。
翌日胃がもたれることがないのも大切。海外旅行では環境の変化や食習慣の違いもあって便秘になることが常ですが、ヨーグルトの国では毎日快腸でした♡
パーティーメニューは日本食材とヨーグルトのコラボレーション!
実は今回ブルガリアに行ったのは、現地で200名規模のレセプションパーティのアレンジがあったため。そこで、ソフィアでも人気の日本料理レストランのシェフにメニューを相談したところ、テーマは「日本食材とヨーグルトのコラボレーション」に!
ブルガリア人にもなじみのあるヨーグルトスープ「タラトル」に柚子を加えたり、日本のスタイルである焼き鳥にヨーグルトソースを掛けたり…。
親しみやすいけれど初めて食べる味、といったところでしょうか。いずれも大好評で、あっという間になくなってしまいました。
山間部の家庭で、手前味噌ならぬ、“手前ヨーグルト”の贅沢を体験
ブルガリアでは、羊飼いと家畜の守護神である聖ゲオルギの日(5月6日)に、冬の間休んでいた家畜の放牧や乳しぼりを再開する習わしがあります。
家畜の健康を祝うこの日、朝搾った乳を新しいスターター(種菌)で発酵させてヨーグルトを作り、家族や近隣の村人と一緒に食べる習慣があったそう。このあと1年間、この日に作ったスターターをもとに毎日ヨーグルトをつないでいきます。
市内暮らしでは、共働きで忙しかったり、搾りたての新鮮な生乳を手に入れるのが難しかったり、スーパーでヨーグルトを買う人がほとんどだそう。
今回は、市内から30分ほど北上した村にあるブルガリア正教の修道院を訪問し、ヨーグルトづくりの様子を見せてもらいました。
その後、修道院で飼っている羊や牛の生乳をよく買いに来るという、ペパさんを紹介してもらいました。ペパさんは、なんと花に付く乳酸菌で種菌を作るのに3年がかりで成功したそう。裏山に咲く黄色い花や、ヨーグルト作りを見せてもらいました。
「息子は私のヨーグルトを子どものころから食べているので、(手前ヨーグルトながら…とは言ってはいないが)他のものとの味の違いはすぐにわかるはずだわ」と、嬉しそうに話してくれました。
滞在中に買い集めたヨーグルトを食べ比べ!乳脂肪3.6%が食べ慣れたあの味だった
最終日、滞在中に買い足していた市販のヨーグルトや、訪問先でいただいてきた手づくりヨーグルトを並べて一気に食べ比べをしました。
プレーンヨーグルト3.6%が、まさに私たちが日本で食べ慣れている明治ブルガリアヨーグルトの味。その他、カイマック(ヨーグルトの上にできたクリーム層)ありのものや、古くから伝わる素焼きの壺でゆっくり発酵させた濃厚なタイプを再現したものなど。
衝撃だったのは、あのペパさんにいただいた手づくりのヨーグルトを口に入れた瞬間、唇が痺れたような感覚に。
酸っぱい!!…言葉を選ばずいうと、く、腐っている!?恐らく作ってから1週間は経っていませんが、乳酸菌が活きていて発酵が進んだということではないかと思います。
そして現地の方は、これくらい酸味が進んだものも、「美味しい、美味しい」と食べていました。
酸っぱくなければヨーグルトじゃない!?「キセロ・ムリャコ」はブルガリア人の心
実は、ここまで「ヨーグルト」という言葉を使ってきましたが、この語源はブルガリアではなく、トルコで「攪拌する」という意味の「ヨウルト(yogurt)」からきていると言われています。ブルガリア語ではヨーグルトのことを「Кисело мляко(キセロ・ムリャコ)」、直訳すると「酸っぱい乳」です。
以前、ブルガリアの方が「酸味がないとヨーグルトではない」と言っていましたが、まさに「酸がないものは“キセロ・ムリャコ”ではない」という意味なのかもしれません。
さらに掘り下げて聞いてみると、フルーツフレイバーの多いダノンの小分けタイプや、水切り製法により水分を絞った状態のギリシャヨーグルト、アイスランドのスキールなど、海外から来たものを「ヨーグルト」と呼び、「キセロ・ムリャコ」とは呼ばないのだそうです。そんなルールがあるわけでもないのに、誰もが自然に言葉を使い分けているのですね。
「ブルガリア人は本当にヨーグルトを食べているのか!?」という問いの答えは、「本当にいつも、どこででも食べていた!」です。家の前でタバコを吸いながら、片手にアイリャンを持っておしゃべりしている若い子たちのグループにも会いました。
そして今回の気づきは、ヨーグルトをよく食べているというだけではなく、ブルガリアだからこそ根付いている文化があるということ。
明治ブルガリアヨーグルトが50年前、商品に国名を使いたいと打診した際に「ヨーグルトは古くから私たちが守ってきた民族の心。他国に渡すわけにはいかない!」と交渉は難航したと言われています。まさにその思いがいまも根付いていると感じました。