你好(ニイハオ)!1997年から中国の北京で暮らしているayaziです。InstagramなどSNSを中心に、中国のローカルフードのおいしさや北京暮らしについて紹介しています。
今回は、中国のヨーグルトをめぐるあれこれをお伝えします。
ヨーグルトは飲む?食べる?
まずは中国語の話を少し。ヨーグルトは中国語で「酸奶(スアンナイ)」。「奶(ナイ)」はミルクのことなので、「酸奶」は酸っぱいミルクという意味になります。わかりやすい!
中国人の中には、「酸奶」を食用することを「吃」(食べる)ではなく「喝」(飲む)と言う人が結構います。これは、中国のヨーグルトにはドリンクタイプが多いということを示しているように思います。
筆者が中国で暮らし始めた1997年ごろは、今よりもっとドリンクタイプのヨーグルトが主流でした。そしてそのほとんどが加糖タイプ。日本で甘くないヨーグルトを食べ慣れていた筆者にとっては、選択肢が非常に限られていました。
※厳密に言うと、中国では食品管理上、日本で言うところのヨーグルトを材料によってヨーグルトと風味発酵乳の2つに分けています。
ヨーグルトは、牛乳を乳酸菌で発酵させ、他に何も添加していないもの。風味発酵乳は、ヨーグルトをベースに果物やナッツ、チョコレート、砂糖、香料などを添加したものを言います。ただ、日常生活の中では、この2つは大括りに「酸奶」と呼ばれ、売り場でも混在して並べられています。
中国にも「糖分ゼロ」の風が!広がる無糖派の選択肢
そんな中、無糖派にとってほぼ唯一の選択肢だったのが「和潤」というブランドのヨーグルトでした。無糖なうえに、スプーンでお豆腐のように塊状に掬えるかたさで、日本人にとってはお馴染みの質感です。
それが最近では、健康志向の人が増えたせいか、無糖のヨーグルトをよく見かけるようになりました。パッケージにも糖分「0」という文字がよく見られます。
ある高級スーパーでは、「簡愛(SIMPLE LOVE)」というブランドの試食サービスが行われていました。蔗糖0の商品を手に取ると、店員さんが我が意を得たりという表情で、「これ、よく売れていますよ」と一言。
全国区ブランドは内モンゴル自治区の2つだけ!ほかはエリアごとに群雄割拠
ところで、中国のヨーグルト事情がわかったところで、昨今人気のヨーグルトブランドにはどんなものがあるのでしょうか。
中研普華研究院が発表した「2024-2029 中国ヨーグルト業界見通し・発展戦略研究報告」によると、中国ヨーグルト市場の2023年の販売額は1191億元(約2兆5615億円)で、前年同期比5.3%増とのこと。
競争構造は比較的分散しており、全国的なブランドは内モンゴル自治区の「蒙牛」「伊利」の2つだけ(シェアは「蒙牛」が約23%、「伊利」が約13%)。そのほかはエリアごとに強いブランドが異なり、さらには新興ブランドもどんどん登場していて、2強のほかは群雄割拠といった状況です。
そんな中で、筆者が最近気に入っているのは、この「卡士(CLASSY-KISS)」。広東省深セン市のブランドです。
結構割高ですが、お味もその分リッチです。食べるタイプなのもお気に入りの理由。
もう一つのお気に入りはこれ。
ゴロッと大きなフルーツが大量に入った「好満足」シリーズの葡萄です。「好満足」は「大満足」という意味なのですが、葡萄の粒が丸ごとたくさん入っていて、本当に大満足!ほかにもイチゴやオレンジなどがあります。
食後にヨーグルト?中国人が期待するのは整腸作用より消化促進効果
また、中国では健康志向の強い方も多く、「食後にヨーグルトを飲む」という習慣を持っている人が結構います。日本ではヨーグルトの整腸作用に比較的スポットが当たっていますが、中国では消化促進作用がより重視されているようです。
それを受けて、その名も「食後一時間」なる商品まで登場。ボトルには、「食後一時間内は胃液のpH値が高くなっており、プロバイオティクスはpH値の高い胃液で生菌の数を高く保つことができる」という説明が書かれていました。
ヨーグルトも医食同源!生薬入りの身体にいいヨーグルト
さらに中国では中国医学が生活や食習慣に根付いていて、それを感じさせるヨーグルトもあります。中でも代表的なのが、ナツメが入ったヨーグルト。ナツメは免疫力を高め、消化を助けるなどの効果があり、「1日に3つ食べると老いない」と言われるほど身体にいいとされています。
また、北京のブランド「三元」からは、なんと生薬の茯苓(ぶくりょう)入りのタイプまで!
茯苓はサルノコシカケ科のマツホドというキノコの菌核を使った生薬で、利水作用があり、むくみなどを改善するそうです。そう聞くと苦いのかと思われてしまいそうですが、茯苓自体の味は特に感じません。
トレンドは「ヨーグルト+シリアル」。朝食代わりに重宝するかも?
中国のヨーグルトで気になるトレンドと言えば、シリアルやドライフルーツ、ナッツが入ったタイプ。シリアル代わりに朝食として食べられているようですが、友人の女性はダイエットの一環で夕食代わりに食べると言っていました。
日本人と中国人の友人たちに声をかけて何種類か食べ比べをしてみたところ、一番人気だったのが「天辺的額吉」。「蘭格格酸奶」という内モンゴル自治区ウランチャブ市のブランドが出しています。
「額吉」はモンゴル語で「お母さん」。「天辺的額吉」は「はるか遠くにいるお母さん」という意味になります。「牧畜民が多く暮らす草原で作られている懐かしいお母さんの味」というイメージが消費者の心に刺さっているのでしょうか。
人気のポイントはヨーグルト自体の味。加糖ですが、甘さは控えめで、とても爽やかな酸味が感じられます。シリアルやナッツも自然な味わいが感じられました。
贈答品として人気!ロングライフヨーグルト
さて、ここまでは要冷蔵のヨーグルトをご紹介してきましたが、中国では常温保存のロングライフヨーグルトも人気があります。
だいたい6ヶ月保存が可能で、10個から12個入りのパッケージで売られていることが多く、贈答品にもよく使われます。
中国では、結婚して両親と別に暮らすようになっても、週末になると実家に帰って一家だんらんのひと時を過ごしたり、春節(旧正月)などの大型連休に帰省したりする際に、両親や祖父母など年長者に贈答品を用意する人が多くいます。
アイテムとしては、相手の健康を願って、健康増進品など健康に良いものを贈るのが主流。その代表的なものとして、ヨーグルトも選ばれているようです。
スーパーの売り場の人によると、牛乳のほうがよく売れるそうですが、ヨーグルトも人気とのこと。また、栄養面を考えて、育ち盛りの子供たちに買い求める人も多いとか。
日本と似ているようで意外と違う中国のヨーグルト事情。いかがでしたか?次回は北京で人気のヨーグルトについてお伝えします。では、ひとまず再見!
※商品の価格は、取材時(2025年1月)のもので、1元=21.5円で計算しています。