你好(ニイハオ)!1997年から中国の北京で暮らしているayaziです。インスタグラムなどSNSを中心に、中国のローカルフードのおいしさや北京暮らしについて紹介しています。
今回は、筆者が住んでいる北京のヨーグルトについてご紹介します。
北京っ子の郷愁の味。ぽってりとした陶器瓶入り「老北京ヨーグルト」
北京には「老北京酸奶(ラオベイジンスアンナイ)」と呼ばれるヨーグルトがあります。「老北京」は昔ながらの北京、「酸奶(スアンナイ)」はヨーグルトという意味。
口が細くて底に向かって太くなるぽってりしたフォルムの瓶入りで、紙かプラスチックで蓋がしてあり、そこにストローを刺して飲みます。お味はほんのり甘く、酸味もおだやか、さらりとした水気のある質感で、とても飲みやすいヨーグルトです。

雑誌「三聯生活週刊」によると、北京でヨーグルトが売られるようになったのは今から100年ほど前のこと。ロシア人がヨーグルトを売る店を出していたそうです。
でも、一般市民がヨーグルトを飲むようになったのは1980年代から。北京の人たちがヨーグルトを飲む習慣ができたのは、実はほんの40年余り前なんですね。
思い出のひとコマ!胡同の売店に並ぶ陶器瓶入りヨーグルト
筆者が北京で暮らすようになった1990年代末ごろ、北京の裏路地「胡同(フートン)」にある小さな売店では、店先で必ずと言っていいほど「老北京ヨーグルト」が売られていました。
とはいえ、当時は「老北京」という名前はついていなかったと記憶しています。そして、瓶のフォルムは今と同じですが、ガラスやプラスチックではなく灰色の陶器。実に素朴なパッケージでした。

飲み終わったヨーグルトの瓶は返却して、再利用されていました。ストローの刺さった陶器瓶が店先に並んでいる光景は、その当時北京で過ごしたことのある人にとっての思い出のひとコマになっています。

陶器瓶から衣替え。新世代の「老北京ヨーグルト」
瓶を回収して洗浄し、再利用するシステムは手間とコストがかかったようで、この素焼きの陶器瓶ヨーグルトは次第にすたれていきます。最盛期には30社以上あったメーカーは減っていき、ほとんど姿を消してしまいました。
でも、しばらくすると、ぽってりしたフォルムはそのままに、陶器からガラスやプラスチックの容器に“アップデート”された「老北京ヨーグルト」が誕生。今、北京で売られているのはこの新世代の「老北京ヨーグルト」です。
振り返ってみると、ことさらに「老北京」が強調されるようになったのは、各地方の伝統や民俗が観光客を呼び、地域おこしの看板になることが意識され始めた頃のように思います。「老北京」は観光資源として再び脚光を浴びるようになっていったのです。

どれが人気ナンバーワン?「老北京ヨーグルト」飲み比べ大会をやってみた!
そんな「老北京ヨーグルト」ですが、各メーカーからいろいろな商品が出ています。そこで、新世代「老北京ヨーグルト」を買い集め、友人たちと飲み比べ大会を催してみました。

今回買った「老北京ヨーグルト」は、左から「聖祥」というメーカーのものが3種類(写真左から「老北京酸奶」「蜂蜜酸牛奶(大)」「蜂蜜酸牛奶(小)」)、「北京今時代」の「風味発酵乳 老北京原味酸奶」、「北冰洋」の「冰冰熊原味酸奶」の計6点。どれも飲むヨーグルトです。
試飲の結果、一番人気は「聖祥」の大きいほうの「蜂蜜酸牛奶」でした(左から2番目)。蜂蜜入りでほんのり甘く、シャバシャバした質感で、飲み口がさっぱりしています。
個人的には、これが昔飲んだ陶器瓶のヨーグルトに一番近かったような……。紙の蓋にブスッとストローを刺して飲めるようになっているところも当時のままで、懐かしい記憶がよみがえりました。
ネットで火がついた「奶皮子酸奶(膜張りヨーグルト)」。その風味とは?
そしてもうひとつ、北京でここ1年ほど大人気になっているヨーグルトがあります。
その名は「奶皮子酸奶」。北京の老舗レストラン「紫光園」の自家製ヨーグルトで、去年の4月頃からネットで注目されるようになり、あっという間に人気爆発!地方からわざわざキャリーケース持参で買いに来る人もいるほどです。

「奶皮子(ナイピーズ)」というのは、牛乳を熱した時にできる膜のこと。その名の通り、ヨーグルトの表面に膜が張った、いわば「膜張りヨーグルト」です。
食べてみると、舌ざわりがとてもクリーミーで、生クリームのようにリッチで濃厚。でも、ほどよく酸味がきいています。確かに、これは癖になる美味しさかも!

紫光園の「奶皮子酸奶」人気がきっかけになったのか、今では他のレストランやメーカーも続々と同様の商品を発売しています。
若者たちが続々行列!北京で大人気のミルクスタンドに潜入
ある週末、「老北京ヨーグルト」が店先に並ぶ様子を写真に撮ろうと訪れた簋街(グイジエ)という通りで、行列のある乳製品店を発見しました。

「便民奶站」の「便民」とは「人民のため」、つまり「安い」という意味。「奶站」は「ミルクステーション」という意味です。なんとここには、寒空の下だというのに100人以上と見られる長い行列ができていました。並んでいたのはほとんどが若者です。
「何を買いに来ているんですか」と聞いてみると「ネットで人気だから来てみた」とのこと。中国のインスタグラム風SNS「小紅書」で話題になっているのだそうです。
ほかの店よりも安価なうえに、北京ではなかなか手に入らない珍しい商品が売られているのだとか……。その日はあまりの行列に恐れをなしてあきらめ、平日に出直してみました。
間口の狭い鰻の寝床のようなお店に入ると、両側に牛乳やヨーグルト、チーズデザートなどがずらりと並べられています。
お客は小さな買い物かごを手に入店し、まずは向かって右側を歩きながらチェック。買いたいものをかごに入れていきます。店の突き当りまで行ったらUターン。今度は向かって左側から商品を選び、出口で精算して店の外へ出る仕組みです。

「立ち止まらないでください!」と注意されるわけではありませんが、店内に入っても人の流れに乗っていないといけないので、そんなにじっくり考えている暇はありません。
思いがけない展開にあたふたしながら、目についた商品をかごに入れ、気が付いたらお店の外に……。買いたいものを過不足なくゲットするには、事前に予習をして戦略を立てる必要がありそうです。
「便民奶站」で見つけたちょっと珍しいヨーグルト2選!
「便民奶站」で買ってきたものの中から、ちょっと気になったヨーグルトを2つご紹介します。まず、「馬五五」というブランドの「奶皮子老酸奶」。北京でも大流行中の「奶皮子酸奶」ですが、こちらは内モンゴル自治区産です。中国人の友人に見せたら「あ、これ知ってる!ライブコマースで超人気なの!」と目を輝かせました。
表面にはかなり厚めの膜が張っており、味は割合こってり。でも下のヨーグルトはシャバシャバしていて爽やかな酸味がありました。シリアルと一緒に食べるのが流行っているそうです。

2つめは「酸奶疙瘩(スアンナイ ガーダ)」。「疙瘩」は塊や団子状態の物のことです。「酸奶疙瘩」はヨーグルトをゆっくり加熱してから常温で放置し、表面に浮いてきた乳脂肪分を固めて干したもの。内モンゴル自治区や新疆ウイグル自治区でよく作られています。
これは新疆産。「鮮」がついているだけあって、干す前の状態なのか、ホイップクリームを絞り出したような状態でカップに入っています。あまり酸味は感じられず、昔駄菓子屋で食べた「ヨーグル」を思い出すような味でした。
それにしても、ネットで人気とはいえ、乳製品店に若い人たちがこれほどの大行列を作るとは!ネットのトレンドに敏感ということもあるかもしれませんが、北京の人たちの乳製品好きを実感できるスポットではありました。
2回にわたってお届けした中国と北京のヨーグルト事情。いかがでしたか?短期滞在ビザも免除されたことですし、中国ならでは、北京ならではのヨーグルトを味わいに遊びに来てみるのはいかがでしょうか。
※商品の価格は、取材時(2025年1月)のもので、1元=21.5円で計算しています。