こんにちは、ヨーグルトマニアの向井智香(むかいちか)です。
皆さん、Podcastはお好きですか。
わたしは岡山の酪農家こばちゃんの番組「酪していきぬくラジオ」の「向井さんのヨーグルトーク」というコーナーで、月1ペースでヨーグルトのディープなお話をさせていただいております。
酪農家さんは作業中にラジオをかける習慣のある方が多く、牧場見学では年季の入ったラジカセが牛舎に溶け込んでいる姿にたびたび出会えます。
最近では聴くだけでなく、ご自身でPodcastの番組を持たれている方もいらして、酪農家さんの日常やお人柄を身近に感じることができます。
そんな中でイチオシの番組が、今年4月から始まった「山小屋からこんにちは、」。
山口県の船方農場さんがZen Studioと名付けた山小屋から配信している番組です。
この番組では酪農に限らず幅広い話題が出てくるのですが、常に考え方の軸となっているものが明確で、とても熱量を感じます。
そんな船方農場さんに、番組が始まる少し前の3月にお邪魔させていただいていたので、今日はそのお話を。
山口県外にはほぼ出回らない!?地産地消の生乳ヨーグルト
船方農場さんがヨーグルトを製造販売されていらっしゃることはSNSで知っていたのですが、オンラインショップに出ていないため入手できず、ずっと気になる存在でした。
ようやく現地で現物に出会えて興奮!
おしゃれなパッケージではありますが、牧場のヨーグルトにしてはプレミアムな演出がされていないのが意外です。
というのも、スーパーで買えるヨーグルトの多くは「乳業」が製造しており、日々の食卓に乗ることを意識したカジュアルな商品展開がメインです。
一方で「牧場」が製造するヨーグルトはお土産需要を意識し、瓶入りなどの非日常な雰囲気を纏うことが多いのです。それだけに、3個パックのカジュアルさには驚きました。
でも理由を聞いて納得。
このヨーグルト、大半は近隣の方々への宅配で親しまれているのでした。
地域に愛されて六次化。牧場から製造まで手がける農場へ
実は、船方農場さんの原点はお米とシクラメン。船方“農場”という名前でお気づきかもしれませんが、元々は牛ではなく作物を育てる農家として、1964年に創業されました。
乳牛が導入されたのはその5年後。収穫時期が限られる農作物とは違い、生乳は毎日出荷できるため、安定的な収入をつくるのに役立ったようです。
こうして酪農にも事業を広げられた船方農場さんは、地域の方々をオープンに受け入れ、バーベキューや搾乳体験などを通して交流を深めていきます。
その中で聞こえてきたのが「船方農場さんの牛乳が飲みたい!」という声。
当時の船方農場さんは生乳を外へ出荷していたため、オリジナルの牛乳は存在していなかったのですが、この地域の方々の声に応えるべく六次産業化(※)。
このように地域の方々に愛され、必要とされて牛乳・乳製品が開発されたことを知ると、ヨーグルトが日常に馴染むデザインで、遠方に向けた販売がされていないことにも深く頷けます。
※一次産業を行う生産者が、二次産業(加工)と三次産業(流通・販売)を一貫して行うようになることを、それぞれの数字を足して(または掛けて)六次産業化といいます。
時代は変わり、量よりも“在り方”へ
一時は500頭を超える大規模酪農を行なっていた船方農場さんですが、現在の乳牛は120頭ほど。
わたしが見学にお邪魔した3月は牛舎暮らしでしたが、今年から放牧にも取り組まれるとのことで、草地の準備も進められていました。
搾乳牛は60頭ほどで、驚くことに全量を自社加工。
一口に六次産業化といっても、生乳の大半を指定団体に出荷することで一定の収入を得つつ、一部を自社加工する牧場も少なくないのですが、船方農場さんは搾った生乳の全てを、牧場併設のFARM FACTORYで加工されています。
「自分たちで売り切れる規模で」と頭数を縮小し、その代わりに稲作との循環や放牧などの“在り方”に力を注ぐというのが現在の船方農場さんのスタイル。
宅配を始めた頃から30年の時を経て、地域は高齢化し、世帯が縮小される中で、この土地での酪農の持続可能性をどう見出すのか。船方農場さんは常に思考し、挑戦されています。
ちなみにこのFARM FACTORYの通路は解放されており、窓から製造の様子を覗くことができます。
その通路を進むと辿り着くのがFARM SHOP!
この導線には感動しました。
生産や加工の様子をこんなにオープンに感じさせてくれる牧場が地元にあったら、牛乳・乳製品がソウルフードになりそうですね。
この日は閉店後の見学だったのでショーケースが空っぽですが、普段はここでヨーグルトなどの乳製品が購入できるそう。
他にも農場内には自然を眺めながらソフトクリームが味わえるCAFEがあったり、団体予約制でバーベキューを楽しむことができたりと、自然や食を楽しむ仕掛けが多々。
山口県方面へお出かけの際はぜひ訪れてみてください。
船方農場
住所:山口県山口市阿東徳佐下11450-39
電話番号:083-957-0369
営業時間:
CAFE 10:00~16:30(L.O.16:00)
FARM SHOP 10:00~16:00(12/31のみ12:00まで、年末年始休業)
※BBQは団体予約制
農場の公式サイト
https://funakata.co.jp/
新山口駅に直営カフェあり!名物は船方ソフトが乗ったパフェ
船方農場さんの所在地を確認してアクセスの難しさに唸った方も、大丈夫。船方農場さんの直営カフェが新山口駅にあります!
外装も内装もとびきりおしゃれ。
ショーケースには農場から届いた牛乳、プリン、ヨーグルト、チーズ、チーズケーキなどの乳製品が並びます。
ヨーグルトは持ち帰れるので、ここではソフトクリームが乗ったパフェを注文してイートイン。
口溶け後にグッと攻めてくるミルク感の強さが圧倒的でした。
船方農場CAFE 新山口駅店
住所:山口県山口市小郡令和1-2-5
営業時間:10:00~18:00(L.O.17:30)
定休日:火曜
お店のInstagram
https://www.instagram.com/funakatafarm_cafe/
むっちりとした質感や口溶けが魅力。「船方農場の生乳ヨーグルト」2種
さて、そんなこんなで後日自宅でじっくりと味わわせていただいたヨーグルト。
画像左側のプレーンは生乳100%に2種類の乳酸菌とビフィズス菌BB-12を配合したもの。右側の加糖は生乳90%以上に国産のビートグラニュー糖と2種類の乳酸菌を配合したものです。
どちらもむちっと凝固しており、練っても粒っぽさを残すような質感。プレーンは酸味というよりもミルクの爽やかさを感じる心地よい味わい。意外にも加糖の方が奥歯にキュッとくる甘酸っぱさがあり、嬉しいギャップでした。
また、どちらも密度があり、ゆっくりとした口溶けや風合いのある舌触りが印象的。でも派手に飾り立てず、毎日食べられる素朴さがあるところに、地元の方々の日常に向けた商品なんだなと再確認しながらいただきました。ご馳走様です。