こんにちは。筆者は「すしログ」という鮨専門サイトを運営しつつ、国内外の料理を食べ歩いて20年の「食の変態」大谷だ。
食のために世界を放浪し、石毛直道先生を敬愛して文化人類学を専攻。食べ歩くだけではなく自ら料理することを是としている。
今回ご紹介する「レッカーマウル」は、目白台(椿山荘の近く)にある「フラムクーヘン」の専門店だ。
「フラムクーヘン」は多くの日本人にとって馴染みが薄い料理だろう。筆者自身、「レッカーマウル」で初めて出会い、魅力を教えて頂いた。
「フラムクーヘン」の形状は「薄焼きピザ」で、具はピザよりもシンプル。色合いも素朴なので、「映える」料理ではない。
しかし、シンプルだからこそ完成度の高い「フラムクーヘン」は一口で感動を与えてくれる。
他のどの料理とも異なる魅力を持っているため、瞬時に惚れ込む人は多いはずだ。
「フラムクーヘン」の大きな特徴は、その平たい形状と独特の食感、そしてクワルクやサワークリームを使う点だ。
クワルクは「フレッシュチーズ」に分類されるものの、味わいはヨーグルトに近いと言われる。あるいは「ギリシャヨーグルトを更に濃密にした感じ」とも例えられる。
ヨーグルトは牛乳に乳酸菌を加えて発酵させたもの。
そして、クワルクは牛乳に乳酸菌とレンネットというチーズなどに使う酵素を入れ、加熱して固めたものだ。
つまり、酵素の使用有無が違いなので、クワルクとヨーグルトは非常に近しい存在の乳製品である。
実際にドイツでは、ヨーグルトにジャムやフルーツを混ぜて食べる感じで、クワルクにジャムやフルーツを混ぜて食べることも多い。
「フラムクーヘン」を作る際には、ドイツではクワルクを用いるのが一般的だが、クワルクが日常的に手に入らないエリアや、入手できても品質が安定しないエリアでは、サワークリームやヨーグルトを用いる。
なお、自宅で「フラムクーヘン」を作る場合には、既製品のサワークリームもしくは水切りヨーグルトを使うのが定番だ。そして、水切りヨーグルトを使用する場合には、生クリームをブレンドするとコクがアップして美味しくなる。
今回ご紹介する「レッカーマウル」の周囲には、広大な庭園を有す椿山荘だけでなく、肥後細川庭園や永青文庫、東京カテドラルなどの見どころが多い。普段足を運ばない方こそ、散歩を兼ねて訪問してみてはいかがだろうか?
それでは、「レッカーマウル」と「フラムクーヘン」の魅力を、お伝えしよう。
【フラムクーヘン】とは?
【フラムクーヘン】は、アルザス地方の伝統的な郷土料理だ。アルザス地方とはドイツとフランスの国境沿いのエリア。ワインが好きな方ならば、リースリング、ゲヴュルツトラミネール、ピノ・グリ、ミュスカなどの品種が頭に浮かぶだろう。
【フラムクーヘン】は、簡単に形容するとドイツ式の薄焼きピザだ。「ピザ」と聞くとイタリアのナポリピッツァやアメリカンなパンピザが想起されるだろうが、ドイツ原語の意味は「炎のケーキ」。つまり、「お菓子」と言う位置づけになる。しかし、日本人は「ビールやワインのつまみにピッタリなスナック」と認識するのが良いように思う。「レッカーマウル」の【フラムクーヘン】は感動的な美味しさなので、お酒と笑顔が止まらない味わいだ。
前述の通り【フラムクーヘン】には、クワルクやサワークリームが使用される。そして、「レッカーマウル」では、【フラムクーヘン】を作る際に自家製のサワークリームを使用している。市販のクワルクではなく自家製サワークリームを使用される理由については、頂いてみればすぐに分かるだろう。「レッカーマウル」のサワークリームはコクが非常に強く、それでいて爽快な酸味があり、一口でハマる味わいだ。あまりにも味わい深いので、ヨーグルト好きやチーズ好きだけでなく、マヨネーズ好きにすらオススメしたい!と思ったほどだ。
何はともあれ、【フラムクーヘン】に興味がある人や、味しい【フラムクーヘン】を求めている人は、「レッカーマウル」にお伺いすることを強くオススメする。
なお、「レッカーマウル」のご主人と【フラムクーヘン】の出会いについては、サイトに物語が書かれていて素敵だ。関心のある方は、是非ともご一読あれ。
レッカーマウル 公式サイト
「レッカーマウル」のご主人とお話すると、【フラムクーヘン】への愛情ばかりでなく、ドイツで出会ったカトリンさんへの敬愛を実感する。ご主人は理想の【フラムクーヘン】の味を描いておられ、生地に改良をされている。筆者は今回再訪した次第だが、実際に改良されていることが分かった。以前から生地の配合を変えていて、周辺部が細かく弾けるような食感になっていた。研究し続けているそうなので、繰り返し足を運ぶ喜びがある一軒だと実感した。
「レッカーマウル」のお料理を紹介!
それでは、「レッカーマウル」の【フラムクーヘン】とドイツらしい珠玉のお料理をご紹介しよう。
この度いただいたもの
- レバーブルスト:500円
- カバノッシー:1,100円
- 【フラムクーヘン】クラシック(ハーフ):1,000円
- 【フラムクーヘン】スモークハム&マッシュルーム(ハーフ):1,250円
- 【フラムクーヘン】ズッキーニ&アンチョビ(ハーフ):1,050円
この度頂いたドイツビール
- ガッフェルケルシュ:800円
- シュナイダーヴァイセオリジナル:1,480円
こちらはつまみ類も魅力的なので、軽くつまんでから【フラムクーヘン】を頼むのが良い。メニュー数は多くなくとも精鋭揃いで美味しいものばかりだ。【フラムクーヘン】のサイズについては、【レギュラー】が30cm×25cmで、【ハーフ】が25cm×15cmだ。筆者は妻と訪問して、つまみ2種類に【ハーフ】3枚を頂いたところ大満足であった。
要は「レバーペースト」だ。ハーブが効いていて、レバーのクセは無い。それでいてレバーの香りを楽しめる美味しいレバーペーストだ。口の温度で、コクと共にサラッと溶けてゆく。薄切りでカリッと焼いたドイツパンとの相性が良い。
在庫がある時と無い時があるようなので、頂ければラッキーだ。
マスタード粒入りのジャンボソーセージ。皮も肉も食感がしっかりあるため肉肉しい。それでいて決してボソッとしておらず、ジューシーだ。
肉を食べている!と言う満足感があるソーセージで、ビールが進む。フェンネルが掛けられたザワークラウトも名脇役だ。
なお、筆者は過去に【ジャーマンソーセージ盛り合わせ】も頂いたことがある。
ソーセージの種類は、ヴァイスブルスト、ニュルンベルガー、フライシュケーゼ、アウグスブルガー。見事なラインナップで、こちらも美味しかった。ソーセージ好きは盛り合わせを満喫してから【フラムクーヘン】に移行する流れもアリだろう。
「クラシック」の具は、ベーコンと玉ねぎ。初めての方にオススメされているだけあり、秀逸な味わいのスタンダードアイテムだ。まず、届いた瞬間に玉ねぎの香りが心地良い!実に甘やかで食欲をそそる。そして、いざ頂いてみるとサクッ!カリッ!と気持ち良く弾ける生地に、特製のサワークリームのコクと酸味が調和して抜群に美味しい。どうやら加熱することで乳製品の旨味が活性化するように思われる。
自家製のサワークリームが「ソースであり、主役でもある」と実感する味わいだ。シンプルな構成だからこそ、一口目で真価が分かる【フラムクーヘン】だと言えよう。生地の香りも香ばしくて魅力的。ベーコンが細かすぎず食感を楽しませる粗微塵切りである点も良い。
マッシュルームは薄切りでありながら香りが力強くグイッと立ち、スモークハムの燻香と調和する。そして、ハムのコクと塩気が広がり、香りと味の両面で食欲を刺激し続ける。サワークリームは一般的なチーズとは異なり、酸味が強いので、これが「フラムクーヘンらしい味わい」になると実感する。そして、酸味のおかげで、複数頂いても決して飽きが来ない。
トマトの酸味とアンチョビのコクや香りが加わり、今までとは全く違う味わいだ。アンチョビはご存知の通り一癖ある食材だが、トマトとサワークリームの酸味で後味が爽やかにまとまる。また、玉ねぎが名脇役で、軽くシャキッとした食感と甘味が味わいの底を支える。
こちらのフラムクーヘンを頂けば、ピザ・ピッツァとは似て非なる美味しい料理であることが分かるはずだ。【シュニッツェル(ドイツ式カツレツ)】や【ゲシュネッツェルテス(チキンのトマトソース煮込み)】、【ケーゼシュペッツェレ(自家製ドイツパスタ)】などもある。どれを頼むか悩まされる点だけがネックだろう。
なお、頂いたビールについては、下記の写真をご参考のこと。
お店の食材は全て産地が開示されていて、信頼を覚える。
最後に、店名の「レッカーマウル」とはドイツ語で「食いしん坊・美食家」を指すそうだ。素敵なネーミングである。
レッカーマウル
住所:東京都文京区目白台1-24-8
電話番号:03-6304-1225 ※予約なしの場合、訪問前にお電話するのがベター
予約可否:予約可(WEB予約システムあり)
営業時間:11:30~15:00(14:30LO)、17:30~22:00(21:00LO)
定休日:水曜、木曜
お店の公式サイト
https://leckermaul.jp/