ある日曜日の朝、浜松町のトルコ料理店「YUSRA's Kitchen(ユスラズキッチン)」に36人が集まりました。
テーブルの上には、野菜、オリーブ、卵料理、乳製品、煮込み料理、甘味、そして焼きたてのパン。色とりどりの小皿が、まるでトルコの朝食店そのままに並んでいます。
開始前から、皆はずらりと並んだ料理に釘付け。スマホを手に撮影する人が後を絶たず、いざ開始となってもまず撮影タイム。それほどまでに圧巻でした。
トルコには、日本ではまだほとんど知られていない豊かな朝食文化「カフヴァルトゥ(Kahvaltı)」があります。現地でその素晴らしさに魅了された私は、さっそく再現イベントを企画。
浜松町の「ユスラズキッチン」と私、そして「みんなのヨーグルトアカデミー」の共催で、トルコの朝食を丸ごと体験してもらう会を開いたのです。
「トルコ料理を食べるのは初めて」と語った参加者も多くおり、その顔には食事が始まってほどなく、驚きとともに笑顔が広がっていきました。
美食の街・ガズィアンテプ出身のシェフがつくる、リアルなトルコの朝ごはん
このイベントが生まれたきっかけは、私がトルコ渡航のたびに感じていた「あの味をもう一度」という想いにあります。
現地で食べるトルコ朝食の豊かさに何度も魅了されながら、東京ではその体験を再現できる場所がほぼゼロ。
そんなとき、浜松町のトルコ料理店「YUSRA's Kitchen」を訪れました。美食の街として知られるガズィアンテプ出身のシェフ・ユスラさんと、旦那さま・大場さんが切り盛りするこの店は、トルコ大使館関係者や訪日観光客が本場の味を求めて通うほど。
ガズィアンテプ出身のシェフによるトルコ料理店は都内でも珍しく、初訪問で提供されたマンタルソテ(トルコのキノコソテー)と、前菜盛り合わせに引き込まれました。
その後、お店のInstagramをチェックしていると、テーブルを埋め尽くす料理が並んだリール動画を発見。「もしかしてトルコの朝食では?」と直感し、ユスラさんに確認するとビンゴ。聞けば、在日トルコ人が企画した朝食会の様子で、その動画を見て来店する客が今も後を絶たないといいます。
そこで「東京でもトルコの朝食をやりたい」——そう持ちかけると、ユスラさんは快く賛同してくれました。
実は、日本人向けの朝食会はユスラさんにとっても初めての試み。電話や現地での打ち合わせを重ね、メニュー・提供方法・人数・金額を1つ1つ決めていきました。
その結果、募集開始から1日も満たないうちに上限の30名を超え、最終的には36名に。この反響で、私は「東京でトルコの朝食を体験したい」という潜在的なニーズの大きさを実感することとなりました。
トルコの朝食「カフヴァルトゥ」でみんなが笑顔に!
「カフヴァルトゥ」はトルコ語で朝食を意味する言葉です。語源は「Kahve(コーヒー)」と「altı(〜の前)」を組み合わせたもので、直訳すると「コーヒーの前」。オスマン帝国時代、空腹で濃いコーヒーを飲むと胃に負担がかかるため、その前に小皿料理を食べる習慣が生まれ、やがて朝食として定着しました。
特筆すべきは、テーブルいっぱいに広がる豪華な小皿料理の数々です。それぞれ異なる皿に盛られた料理が一堂に並ぶ光景は、まさに圧巻。会話とチャイ(紅茶)を挟みながら、ゆっくりと時間をかけて楽しむのがトルコ流です。
今回の食事会でも、トマト・きゅうりなどの野菜、オリーブ2種、卵料理・メネメン、ポテトの前菜(パタテスエズメ)、インゲンの煮込み、チーズ・ヨーグルトなど乳製品、ジャム・蜂蜜など甘味、ブレク2種——15品以上の料理が所狭しと並び、どれもユスラさんと大場さんによる手作りです。
そのなかでも、特に歓声や印象的なエピソードが残った3品をご紹介します。
トルコの定番「ベヤズペイニル」を含む3種のチーズ
「今回はチーズが美味しかった。欲を言えばチーズもっと食べたかった」という参加者の言葉が示す通り、この日、もっとも印象に残ったのがチーズでした。
中でもベヤズペイニルはトルコの朝食に欠かせない定番チーズで、適度な塩気とミルキーな旨味が蜂蜜やジャムとの相性を際立たせます。
自家製ならではのやわらかさとフレッシュな風味は、「チーズというよりも乳そのもの」という印象を与えてくれました。
トルコには150種類以上のチーズがあるといわれています。その文化の一端を、この小皿から感じることができました。
ヨーグルト発祥の地・トルコの食文化に欠かせない自家製ヨーグルト
トルコはヨーグルトの発祥地とも言われる国です。「ヨーグルト」という言葉自体がトルコ語の「yoğurt(ヨールト)」に由来しています。ヨーグルトはブルガリアの印象が強いですが、その語源はトルコ語なのです。
日本ではデザートのイメージが強いですが、トルコでは料理に添えたり、そのままシンプルに味わったりするのが日常的なスタイルです。
この日提供されたのは、ユスラさんが作った自家製ヨーグルト。用意された器を見せていただいたとき、大人が両手で抱えるほどのサイズで、その大きさに驚愕しました。
濃厚でありながらすっきりとした酸味は、どの料理とも相性がよく、それ自体だけで食べても十分な存在感があります。
並んでから早々にテーブルから消えていたのも、納得の味わいでした。
パリッ、サクッ、しっとり。トルコが誇る粉もの「ブレク」
この日の食卓で、私がもっとも印象に残ったのがブレクでした。
ブレクとは、「ユフカ」と呼ばれる向こう側が透けて見えるほど薄く伸ばした小麦粉の生地を何層にも重ね、具材を包んでオーブンで焼き上げたトルコのソウルフードです。
この日提供されたのは2種類。1つはほうれん草とチーズ、もう1つはじゃがいもをマッシュして味付けした具材入り。それぞれユフカの層の間にバター・卵・牛乳で作ったソースを塗り込み、オーブンで丁寧に焼き上げています。
外側はパイのようにパリッ、サクッと香ばしく、中は具材の旨味を吸ってしっとり。この対比が絶妙で、ひと口食べると現地の記憶がよみがえってきます。
ブレクとチャイとの組み合わせは最強のペアリングで、バターやチーズの濃厚なコクをチャイの渋みがすっきりと流してくれます。
会場には「おかわりしようとしたらなくなっていた、もうなくなったの?」「ほうれん草を食べて、じゃがいもはあとで食べようとしたら、すでにテーブルから消えていた」という声が聞こえるほどの人気ぶり。
東京でも都内に多くのトルコ料理店がありますが、こうした形でブレクが提供されている店はほとんど見当たりません。だからこそ、香ばしく焼きあがった表面の生地と、ほうれん草やじゃがいもがしっとり包まれた食感は格別でした。
ヨーグルト5kgを完食!ケバブだけじゃないトルコ料理の魅力
食事会を振り返り、シェフのユスラさん・大場さんはこう話してくれました。
「参加者の皆さんが美味しそうに、楽しそうに食べてくれて嬉しかった」
また、驚くことに、ブレクとヨーグルトは十分な量を用意したのに、予想をはるかに上回るペースでなくなったのだそう。事実、ヨーグルトは5kgが空っぽになりました。
「トルコ料理はケバブ以外にも、日本人が知らないおいしい料理がたくさんある。それを届けていきたい」
この言葉がこの食事会の本質を言い当てています。
トルコ料理といえばケバブ、というイメージは根強いものです。しかしカフヴァルトゥが証明するように、トルコの食文化はそれをはるかに超えた奥深さを持っています。世界三大料理の一角を担う理由が、この一度の朝食で伝わってくるでしょう。
朝食から世界を広げよう
2026年、日本ではファミレスをはじめとした朝食ブームが続いています。しかしその一方で、「世界の朝食文化」に目を向けると、まだ知られていない豊かな世界が広がっています。
トルコの朝食ひとつとっても、実は驚きの事実が詰まっています。ヨーグルトはブルガリアの印象が強いですが、語源はトルコ語「yoğurt」に由来し、トルコが発祥の地とされています。
また、朝食に欠かせないパンは、トルコの消費量がかつて世界一を記録したほど。そしてカフヴァルトゥに必ず添えられる紅茶(チャイ)も、実は消費量世界一はイギリスではなくトルコなのです。
トルコに行かなくても、東京でトルコの本場の朝食を体験できる。この試みを一度きりで終わらせず、れっきとしたトルコ朝食文化を東京に定着させるべく、私は定期開催を目指していきたいと考えています。
ユスラさんも大場さんも「月1回など、定期的に開催できたら嬉しい」と意欲的。東京の浜松町から、トルコの朝が始まる日は、そう遠くないかもしれませんね。
![東京初開催!本場トルコの朝食「カフヴァルトゥ」を浜松町で体験![イベントレポート]](https://yogurt-academy.com/wp/wp-content/uploads/2026/07/turkish_bf_main.jpg)
