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牛乳で自家製ヨーグルトの味はどう変わる?人気のヨーグルトメーカーで比較してみた

ヨーグルトラボ 2023.09.29

牛乳で自家製ヨーグルトの味はどう変わる?人気のヨーグルトメーカーで比較してみた

42度で6時間発酵。4つの牛乳×ブルガリアヨーグルトで風味の違いを比べてみた。

42度で6時間発酵。4つの牛乳×ブルガリアヨーグルトで風味の違いを比べてみた。

ヨーグルトが固まらなくても、好みの味が見つかればいい。そんなスタンスで用意したのは、以下の4種類の牛乳だ。

  1. 農協牛乳(高温殺菌115度20秒・脂肪球均一化)
  2. 木次ノンホモ牛乳(低温殺菌72度15秒・脂肪球そのまま(ノンホモ))
  3. タカナシ低温殺菌牛乳(低温殺菌66度30分・脂肪球均一化)
  4. タカナシ北海道低脂肪乳(超高温殺菌130度2秒・脂肪球均一化)

種菌には、日本全国どこでも入手しやすい明治ブルガリアヨーグルトを選んだ。発酵温度と時間は、ヨーグルトメーカーの自動メニューでは42度で9時間にあらかじめ設定されているが、実験を行ったのが猛暑の夏であることと、発酵が進み過ぎないよう様子をみることから、今回は42度で6時間とした。

[ふつうの牛乳]ブルガリアヨーグルトの再現性高し!酸味はしっかり、舌触り滑らか

農協牛乳とブルガリアヨーグルト

最初に作ってみたのは、「農協牛乳」のヨーグルトだ。「農協牛乳」は、日本でもっとも流通している牛乳の代表格として用いた。

少し細かい話になるが、牛乳とは、国が定める「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」において、無脂肪固形分8.0%以上、乳脂肪分3.0%以上、成分無調整のものをいう。

なかでも世の中に流通している9割の牛乳は、生乳に含まれる脂肪球を均一化させたのち、超高温殺菌(120~150℃で1~3秒)したものである。一方、「農協牛乳」は115℃で20秒という交流高電界殺菌(HEF)方法を用いた唯一の牛乳だ。メーカーサイトによると「生乳本来のすっきりとした味わい」を引き出しているのが特徴とあり、超高温殺菌と同等の殺菌効果・賞味期限を確保している。

まずはそのまま飲んでみると、学校給食を思わせるような、どこか懐かしい味がする。コクがありつつ、比較的後味はすっきり。高温殺菌牛乳ならではの乳っぽさも幾分かあり、慣れ親しんだ牛乳らしい牛乳といえる。

この「農協牛乳」に、種菌となるブルガリアヨーグルトを9:1の割合で混ぜ合わせ、ヨーグルトメーカーに入れて42度、6時間にセットすれば仕込みは完了。猛暑も手伝ってか、6時間後にパックの中を見てみると、しっかりと固まっていた。

自家製ヨーグルトの基本的な作り方

牛乳900gに、種菌となるヨーグルト100gを加える。

①牛乳900gに、種菌となるヨーグルト100gを加える。

熱湯消毒した柄の長い混ぜ棒(ヨーグルトメーカーの付属品)で、牛乳とヨーグルトをしっかり混ぜ合わせる。

②熱湯消毒した柄の長い混ぜ棒(ヨーグルトメーカーの付属品)で、牛乳とヨーグルトをしっかり混ぜ合わせる。

ヨーグルトを加えた牛乳パックの口をクリップ(付属品)で閉じる。

③ヨーグルトを加えた牛乳パックの口をクリップ(付属品)で閉じる。

ヨーグルトメーカーに入れて42度、6時間静置する。発酵温度はお風呂とほぼ同じだ。

④ヨーグルトメーカーに入れて42度、6時間静置する。発酵温度はお風呂とほぼ同じだ。

牛乳が発酵して、ヨーグルトになった。

⑤牛乳が発酵して、ヨーグルトになった。

できあがったヨーグルトの第一印象は、酸味が強い。種菌となったブルガリアヨーグルトも酸味がしっかりしているが、比較すると「農協牛乳」でつくりたての自家製ヨーグルトのほうが、いくぶん発酵仕立てのまろやかさがあるようだ。

また、なめらかさはブルガリアヨーグルトの方が勝るが、これは仕込み時の混ぜ方にもよるかもしれない。ともあれ、本家のブルガリアヨーグルトに匹敵する滑らかさと酸味、加えて発酵由来のまろやかな風味も得られた。

農協牛乳

[スペック]高温殺菌115度20秒・脂肪球均一化・無脂乳固形分8.3%以上、乳脂肪分3.5%以上
[結果]ブルガリアヨーグルトの再現性が高く、なかなかの上出来!

  • 固まり方:★★★★★
  • 滑らかさ:★★★★
  • 酸味:★★★★★
  • まろやかさ:★★★

[ノンホモ牛乳]固まりが弱いが、ふくよかでやさしい味わい。ヨーグルトの原型に出会ったような感動

ノンホモ牛乳

続いて試すのは、「木次乳業ノンホモ牛乳」である。木次乳業は、日本で初めて低温殺菌(パスチャライズ)牛乳の開発、販売を実現した乳業メーカーで、島根県雲南市木次町にある。

同社の乳牛は化学肥料を使わずに育てた牧草で育てており、すべて低温殺菌牛乳だ。低温殺菌法は、フランスの細菌学者、ルイ・パスツールが発明したことからパスチャライズ牛乳とも呼ばれ、生乳本来の風味を損なわず、人に有害な細菌のみを死滅させる画期的な手法である。

商品名にある「ノンホモ」とは、ノンホモゲナイズ、すなわち牛乳内の脂肪球を均一化しないで作られていることを意味する。多くの牛乳は、牛乳に含まれる脂肪球を均一化させ、水分とクリーム分が分離しないよう処理しているが、ノンホモ牛乳は静置すると上部にクリームが浮いてくる。つまり、限りなく「牛さんの絞りたてのお乳」に近い牛乳なのだ。

この牛乳は、2種類の方法でヨーグルトを仕込んだ。ひとつはそのままの牛乳に種菌となるブルガリアヨーグルトを加えて発酵させたもの。もうひとつは85度で1分間加熱し、30度以下に冷ましてから種菌のブルガリアヨーグルトを加えて発酵させたものである。なぜなら、牛乳に含まれるたんぱく質は、80度以上で変成し始める。すると、前ページでご紹介した通り、固まりやすくなると考えられるからだ。
資料※4

加熱の段階で牛乳の水分とクリーム分がやや分離している感じがあったが、しっかり混ぜて分離しないようにした。
加熱の段階で牛乳の水分とクリーム分がやや分離している感じがあったが、しっかり混ぜて分離しないようにした。
雑菌が繁殖しないよう、保冷剤と氷を使って一気に冷やした。
雑菌が繁殖しないよう、保冷剤と氷を使って一気に冷やした。

結果は、非加熱の牛乳の場合、ほぼ固まらず、飲むヨーグルトになった。しかし、風味は豊かだ。最初におだやかな酸味を感じるが、牛乳を飲んだときの印象そのままの、丸みのある、やさしい味わいが踏襲されていて感動した。

非加熱の低温殺菌牛乳でつくった自家製ヨーグルト。
非加熱の低温殺菌牛乳でつくった自家製ヨーグルト。

一方、加熱済の牛乳は非加熱の牛乳よりも固まった。これは仮説通りである。しかし、スプーンで取り出してうつわに盛り付けるとかなりゆるい。混ぜると、こちらも非加熱バージョンとほぼ同じテクスチャーになってしまう。ただ、加熱して固めているからか、少し風味は濃いように感じた。

85度で1分間加熱し、すぐに保冷剤で冷やした牛乳で作った自家製ヨーグルト。
85度で1分間加熱し、すぐに保冷剤で冷やした牛乳で作った自家製ヨーグルト。

いずれも酸が立ったところがなく、まろやかな味わいが好きな方には好まれる味わいだろう。加熱済の牛乳の場合、仕上がりの際にいくらかダマができるが、むしろヨーグルトの原型に出会ったような、素朴な印象を受けた。

木次ノンホモ牛乳

[スペック]低温殺菌72度15秒・脂肪球そのまま(ノンホモ)・無脂乳固形分8.4%以上、乳脂肪分3.6%以上
[結果]加熱後に発酵させないとほぼ固まらない。牛乳のまろやかさが踏襲される。素朴でリッチな味わい。

  • 固まり方(加熱後):★★
  • 滑らかさ:★★★★
  • 酸味:★★
  • まろやかさ:★★★★★
低温殺菌牛乳と低脂肪乳からはどんなヨーグルトができる?
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記事を書いた人

佐藤貴子
佐藤貴子

編集者・ライター。中華がわかるWEBマガジン『80C(ハオチー)』ディレクター。中華圏を胃袋目線で旅するroundtable(ラウンドテーブル)主宰。得意料理は中国の発酵火鍋。

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