背の高さの理由は乳製品?
世界で最も背の高い国民として知られる、オランダ人。2022年の調査(18〜25歳対象、NCD-RisC実施)によると、平均身長は男性184cm、女性170cm。男女とも、日本人より12cmも高いのです。街を歩いていると、小人の気分です。
しかし彼らも昔から長身だったわけではなく、実は19世紀前半まではヨーロッパの中で最も背が低い国だったようなのです。それが200年間で約20cmものび、世界一に。
その理由として研究者らが挙げるのが、栄養状態や衛生状況がよくなったこと、輸送・保存技術の向上により、流通段階でのロスが減って食料が得やすくなったこと[Stulp 2023]など。しかし友人たちと話すと「乳製品をたくさん食べるからじゃないかな」と笑いながら語ります。
冗談めかして言うけれど、たしかにオランダの乳製品消費量は世界有数。自国の生乳はゴーダチーズに加工して輸出し、ヨーグルトやバターなどの乳製品は周辺国から輸入して食べています。
専用弁当箱まである!オランダの「ヨーグルト弁当」はランチの定番
そんなオランダのヨーグルト事情は日本とひと味違っていて、朝食はもちろん、昼食にも専用容器にヨーグルトとナッツやフルーツを入れて弁当として持参する人をよく見かけます。パンやご飯はなく、これが主食。
このヨーグルト専用容器yoghurtbeker、300〜500mlのヨーグルトに加え、ナッツやフルーツが持ち運べるすぐれもの。
しかし食べる量以上に驚くのが、ヨーグルトの仲間の種類の豊富さ!2024の夏、オランダに引っ越したのですが、初日に「ヨーグルト買おう」と売り場に行ったら、ヨーグルト「らしきもの」がずらっと並んでいて、どれを買ったら良いのか迷ってしまいました。
どういうことかというと、プレーンヨーグルトのブランドが多いのではなく、ギリシャヨーグルト、ケフィア、スキール...などの発酵乳の種類が豊富なんです。「ヨーグルトみたいだけれどヨーグルトとは書いてない、何が違うんだろう」と頭を抱えてしまうほど。
酪農文化が深いことに加えて、移民の多い国際的な国ゆえ、各地の乳製品があることも理由の一つでしょう。今回は、そんなオランダのスーパーで出会える「ヨーグルトとその仲間」の数々をご紹介したいと思います。
「オランダのスーパーにはヨーグルトが売ってない?」
ヨーグルトらしきものはたくさんあるのに、ヨーグルトがなかなか見つからない。売場で迷った最大の原因は、見た目が想像と違っていたこと。牛乳パックに入っているのです。
パッケージを見ると確かにYoghurtと書いてあるのですが、牛乳と並んで売っているので知らないとわからない。日本からの留学生が「オランダのスーパーにはヨーグルトが売っていないんだよ!」と言っていましたが、意識しなければ素通りしてしまいます。
各メーカー、全脂肪・低脂肪・無脂肪の三種類があって、パッケージの色で区別されており、味は日本のものよりも少し酸味が強いかな?という感じ。定番の食べ方は、フルーツやミューズリーをのせて朝食に食べます。
牛乳パック型のヨーグルトは、オランダだけでなくヨーロッパの北の方ではしばしば見かけます。最初は戸惑うのですが、慣れるとスプーンいらずで片手で器に注げて便利なんですよね。
日本のヨーグルトは置いておくと上に乳清が浮いてきますが、こちらは分離することなく常に均一でクリーミー。その違いは製法にあります。
日本で一般的なヨーグルトは後発酵という製法で作られていて、生乳と乳酸菌を個別容器に入れた状態で発酵させます。一方、この牛乳パック型のものは、前発酵という製法。巨大な容器で発酵させた後に、攪拌してなめらかにし、個別容器に入れるのです。だからなめらかな状態が維持されるのですね。
しかし、後発酵のヨーグルトが皆無かというと、そんなことはありません。スーパーの棚をよくよく見ると、時々バケツ型容器に入ったStandyoghurt(固形ヨーグルト=後発酵型)が売られています。
ただし、かろうじて一商品見つかるだけで、極めて目立たない下の方にこっそりいる程度。片手で注げる牛乳パック型の方が楽だからでしょうか。
ちなみに同じバケツ型でRoeryoghurt(クリームヨーグルト=前発酵型)もあって、これはクリーミーだけれどスプーンですくうというもの。どんな需要があるのかは分かりません。
日本でも人気のギリシャヨーグルトと、ヨーグルト発祥の地・トルコヨーグルトの違いとは?
日本でも最近人気ですね。ギリシャヨーグルト(グリークヨーグルト)は普通のヨーグルトを水切りしたもので、水分が少なく濃厚な味です。サイズは500gと1kgが主流。乳脂肪分は0.1%、2%、10%の三通り展開(Melkan社の場合)しています。
日本のギリシャヨーグルトとの違いは、こちらも前発酵型でなめらかであること。水分が少ないけれどもスプーンのすくい跡が残るわけではなく、新鮮な感覚です。
ヨーグルトはトルコ語起源。日本にはない「トルコヨーグルト」の味と食感
一方、ギリシャヨーグルトに比べるとずっとマイナーですが、トルコヨーグルトというのも売っています。トルコヨーグルトって、何なのでしょう?
そもそもヨーグルト(YOGHURT)という英語自体がトルコ語起源(Yoğurt)なので、「トルコヨーグルト」という言葉には、「ジャパニーズおにぎり」のような冗長さを感じます。どうしてわざわざ「トルコ風」をつけるのでしょう。
この疑問は、オランダ人も持っているようで、オランダ人の友人たちとヨーグルトの話をしていたら「トルコヨーグルトって何が違うの?」と逆に尋ねられてしまいました。買ったことがないようです。
確かに乳脂肪分も一種類しかないし最小サイズが1kgだし、なかなか上級編。もっぱらオランダに多く住むトルコ系移民が買うものなのかもしれません。
重いバケツを買って、帰って開けてみると、中は日本のヨーグルトよりさらにかちっと固まっていて、すくうとしっかり跡が残ります。
味は、乳脂肪分8%とあってミルクの風味がありクリーミーな味わい。やっぱり脂肪分はおいしいですね。つるんとではなくややざらっとした舌触りに、ミルクの濃さを感じます。
調べた限りの情報によると、ギリシャヨーグルトより軽めに水切りをするようで、通常のヨーグルトとギリシャヨーグルトの中間の特性を持つようです。料理にも使いやすそうです。