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偶然が生んだ極上クリーム層「しおのえふじかわ牧場」のノンホモヨーグルト

ヨーグルト愛の人々 投稿日:2026.01.30

偶然が生んだ極上クリーム層「しおのえふじかわ牧場」のノンホモヨーグルト

こんにちは、ヨーグルトマニアの向井智香(むかいちか)です。

みなさんはノンホモヨーグルトはお好きですか?

わたしの過去記事「十勝鹿追町の「カントリーホーム風景」で出会ったヨーグルトは、とろけるクリーム層が絶品!」でその魅力を語っている通り、上部にクリーム層ができているヨーグルトのことです。

わたしが食べた中では、香川県のしおのえふじかわ牧場さんのクリーム層が格別!

お取り寄せで輸送の揺れを経て手元に届くそれは、まるでふわふわのホイップのよう。

あまりの違いに何か加工が施されているのかとお聞きしたことがあるのですが、特別なことは何もしておらず、「生乳中の脂肪球の大きさが関係しているのでは」とのお返事をいただきました。

左から向井、藤川さん、そして同行してくれた友人
左から向井、藤川さん、そして同行してくれた友人

ご当地ヨーグルトで注目したい「ノンホモ」仕様とは?

あまり知られておりませんが、搾ったままのミルクは放っておくと分離します。

なぜなら、ミルクの中には様々な大きさの脂肪球(薄い膜に包まれた乳脂肪分)が浮遊しており、大きい脂肪球ほど浮き上がる速度が速いため、時間が経つとそれらが上部に集まって層を成してしまうのです。

そこで、ミルクをホモジナイザーという機械に通して脂肪球を微細化し、乳中に均一に分散させる処理を施してから製品化するのが一般的な牛乳やヨーグルトの製造方法。

わたしたちが普段口にするヨーグルトが分離していないのはこのひと手間のおかげです。

一方、ご当地ヨーグルトの中にはあえてこのホモジナイザーを通さず、自然のままに分離させた「ノンホモヨーグルト」が多く存在します。

大量生産には向かない製法なので、これはご当地ヨーグルトならではの強み。「地元で搾ったままの生乳に限りなく近いものを味わってほしい」という作り手の熱い思いを感じることができて、私は大好きなのです。

そこで、極上のノンホモヨーグルトを求めて、しおのえふじかわ牧場さんへお邪魔してきました!

讃岐山脈の大自然に抱かれ、のびのび育つ30頭の牛

しおのえふじかわ牧場さんがあるのは、香川県高松市塩江町。山々に囲まれた大自然の池のほとりにある牧場ですが、高松空港からは車で25分ほど。北海道の牧場巡りに慣れていると、香川県のコンパクトさに驚きます。

道路を挟んだ左右両方の建物が牛舎です
道路を挟んだ左右両方の建物が牛舎です

牛舎は公道に面しており、車を走らせていると突然牛さんに出会えるのがおもしろいのですが、あいにく搾乳のタイミングと重なってしまい、無人ならぬ無牛の牛舎。

無牛の牛舎
無牛の牛舎

しおのえふじかわ牧場さんの牛舎は「フリーバーン」といって、牛さんが自由に歩き回れる放し飼い形式。搾乳時には奥にある「ミルキングパーラー」という搾乳専用のスペースに移動します。

ミルキングパーラー

写真右奥がそのパーラーで、搾乳待ちの牛さんたちがのんびりと列を作っています。先ほどの牛舎の写真に、わかりやすく文字を載せたものを再掲します。

無牛の牛

搾乳を終えて帰ってくるとご褒美が食べられるよう、牛さんたちがいない間に牧草やTMR(Total Mixed Ration 完全混合飼料)がセッティングされているのでした。

しおのえふじかわ牧場さんの牛舎は100頭サイズですが、現在の飼養頭数は30頭ほど。牛さんたちは通常の3倍ものスペースでのびのびと暮らすことができます。

そして牛舎の向こう側は大自然。

牛舎裏の大自然

牛さんたちの飲み水は讃岐山脈からの湧き水。訪れたわたしたちも思わず肩の力がスッと抜けるような素敵な環境です。

おいしさの秘密は「脂肪球が〇〇」!?

さて、ここからが本題です。

なぜしおのえふじかわ牧場さんのヨーグルトのクリーム層が格別なのか。その真相をお聞きしたところ……

実のところ、藤川さんご自身も明確な理由はわからないそう。

ですが、牧場で搾った生乳を検査にかけたところ、一般的な生乳よりも脂肪球のサイズが大きいことが判明。これが独特のクリーム層を作り出しているのでは? とのことでした。

狙ってそうしたわけではないので、「下手に環境を変えられへんねん」と藤川さん。

牛愛を熱く語る藤川さんと、元酪農家の友人
牛愛を熱く語る藤川さんと、元酪農家の友人

広い牛舎でのびのびと暮らし、人に慣れ、山からの湧き水に恵まれていることなど、しおのえふじかわ牧場さんならではの様々な要素が重なって生じたであろう奇跡の賜物。これは現地で食べずにはいられません!

プレーンヨーグルト

果たして、輸送の揺れを受けていない状態ではどのような質感なのか……?

クリーム層の甘みとヨーグルトの酸味。自然なコントラストが美味!

牧場では藤川さんのご厚意でソフトクリームや甘酒などを振る舞っていただいたので、ヨーグルトは翌朝のお楽しみに。

慎重にホテルまで運び、朝日の中でついに開封です。

プレーンヨーグルト開封

おおおおお!!!

いつもお取り寄せでは揺れに揺られてふわふわのホイップのようになって届いていたあのクリーム層。

現地で入手するとこんなに静かな姿をしていたとは!!

こういう姿を拝むたびに、現地を訪問した甲斐があるなぁとしみじみ感動します。

そっとスプーンを。

プレーンヨーグルト匙上げ

なんと美しいのでしょう。

ヨーグルトにはほんのりとした酸味があり、クリーム層が持つ乳脂肪分の甘みがよく映えます。

プレーンヨーグルト匙上げ

輸送の揺れでホイップのようになった姿しか知らなかったので、この美しい層の状態には驚きましたが、口溶けの良さはやはりさすが。

他のどのヨーグルトとも違います。

六次産業化で牧場の魅力を伝え続ける

ところで、よく誤解されてしまうのですが、一般的な牧場ではヨーグルトは製造されていません。

本来の牧場の役割は生乳生産。動物を育てて資源を得る「一次産業」ですので、搾った生乳は出荷して終わりです。

その生乳を購入して加工するのが「二次産業」、乳業メーカーのお仕事です。そうして作られたヨーグルトを販売するのが「三次産業」の小売店。現在の日本の産業構造では、このような分業がなされています。

ところが、しおのえふじかわ牧場さんでは搾った生乳を加工し、販売まで一貫して行っております。これが六次産業化牧場。

「一次産業」「二次産業」「三次産業」の全ての役割を果たすことから、足し算または掛け算でそのように呼ばれています。

100頭規模の牛舎を持つしおのえふじかわ牧場さんは、当初は一次産業に専念して増頭することを考えていたそう。

しかしながら、牛さんが増えると、牛さんの排泄物も増えます。

牛糞は堆肥にして販売することができますが、土地の狭い香川県では堆肥は既に飽和状態。高知県では逆に堆肥が不足していたようですが、輸送費がかさみます。

それならば、増頭ではなく六次産業化を―――と、初めて作った商品がソフトクリームでした。

ソフトクリーム

これを皮切りに、現在は牛乳、アイス、チーズ、チーズケーキ、ヨーグルトなど様々な乳製品が作られ、動物たちとの触れ合いなども楽しめる観光牧場として愛されています。

やぎや馬、鹿などへの餌やり体験も楽しめます
やぎや馬、鹿などへの餌やり体験も楽しめます

もしも増頭をしていたら、現在の30頭ののびのびとした牛舎暮らしは存在せず、生乳は出荷されて合乳となり、あの極上のクリーム層のヨーグルトは誕生しなかったのかもしれません。

話を聞けば聞くほどに、狙ったことは何一つ存在せず、いろんな偶然が重なって生まれた奇跡のようなヨーグルト。機会があればぜひ現地で味わってみてください。

しおのえふじかわ牧場

住所:香川県高松市塩江町上西乙585
電話番号:087-893-0235
営業時間:10:00~17:00
定休日:不定休
公式サイト:http://www.sionoe.com/

記事を書いた人

向井智香
向井智香

大手からご当地まで日本中のヨーグルトをレビューするヨーグルトマニア。各地の牧場や工場を巡って酪農・乳業を学び、講演会やワークショップなどを通してヨーグルトのファンづくりに励む。「ヨグネット」代表。

ヨーグルトの本(2022年/MdN)
https://books.mdn.co.jp/books/3221403035/
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