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ヨーグルトに歴史あり!年代でみるヨーグルト「日本はじめて」物語

ヨーグルトラボ 2024.04.02

ヨーグルトに歴史あり!年代でみるヨーグルト「日本はじめて」物語

こんにちは、ヨーグルトマニアの向井智香(むかいちか)です。

今では日本各地でさまざまなヨーグルトが買えるようになりましたが、その背景には、常に「初めて」市場を開拓したパイオニアが存在しています。

そこで当記事では、日本のヨーグルトの歴史を切り拓いてくださった数々の商品に敬意を込めて、蘊蓄を交えながら、「日本初」を発売年順にご紹介したいと思います。

※パッケージは執筆時点(2024年1月)のものでを撮影しております。

【1917年】広島発!日本初のヨーグルト「チゝヤスヨーグルト」

「チゝヤスヨーグルト」パッケージの違い

「チー坊」でお馴染みの広島の乳業メーカー、チチヤスさん。実は日本で初めてヨーグルトを販売されたレジェンドでいらっしゃいます!

飛鳥時代に献上されていた古代乳製品の「酪(らく)」、明治時代に売れ残った牛乳から作られていた「凝乳(ぎょうにゅう)」など、それまでもヨーグルトらしきものの製造や販売はありました。

しかし、ヨーグルトとしてパッケージングされた製品らしい製品が世に出たのは「チゝヤスヨーグルト」が初めてのこと。瓶入りの加糖タイプで、薬に近い高級品だったと聞きます。

ところで現在のチチヤスヨーグルト、パッケージが2パターンあることはご存知でしょうか。

台形型のプラカップ(写真右)に親しみをお持ちの方が多いと思うのですが、わたしの住む地域で見かけるのは天面の繋がった4ポットタイプ(写真左)。販売エリアによって容器が異なるのです。

なぜなら、お馴染みの台形カップはチチヤスさんが自社製造するオリジナル容器。主に西日本で流通しています。

一方、4ポット容器は一般的なもので、埼玉県のくじらい乳業さんでの受託製造に使用されており、主に東日本で流通しています。

「チゝヤスヨーグルト」

原材料や成分値を見る限り中身は同じはずなのですが、個人的には東日本版はクリーミーで濃厚、西日本版は甘酸っぱく爽やかに感じます。

チチヤスヨーグルトは、容器の中で発酵させる「後発酵(あとはっこう)」タイプなので、容器の形状が味に影響している可能性はなきにしもあらず。ですが、実際のところは容器から感じるノスタルジーの方が味覚に訴えかけるものが大きい気がします。

というのも、これ。

「チゝヤスヨーグルト」チー坊

台形カップの「チー坊」はフィルムの収縮具合で毎回違う顔を見せてくれるので、冷蔵庫を開けるたびにマニア心がキュンキュンとくすぐられてしまうのです!

このクラフト感とチチヤスヨーグルトの香りは、永久に残ってほしい2大要素ですね。

【1970年】日本初の“のむタイプ”「ヨーク」発売

一般に普及するまでに時間を要した日本のヨーグルトは、1970年代に入ってようやく新たな展開を迎えます。まずは日本初の“のむタイプ”のヨーグルトの登場です!

「十勝のむヨーグルト」

現在、大容量かつリーズナブルな飲むヨーグルトとして親しまれている日清ヨークさんの「十勝のむヨーグルト」。この商品の原型となる「ヨーク」は、1970年に製品化されました。

現在の商品にもその旨が記されています。

「十勝のむヨーグルト」パッケージ表記

時代に合わせて変化を遂げた現在の「十勝のむヨーグルト」は、乳酸菌NY1301株が腸内環境を改善する機能性表示食品。脂質をカットし軽い質感に仕上げられているため、乳酸菌飲料に近い感覚でごくごくと飲めます。

ちなみに“のむタイプ”と表記したのは、当時「のむヨーグルト」という言葉が存在しなかったから。

「ヨーク」誕生の10年後となる1980年、日本ルナさんが初めて「のむヨーグルト」という言葉を使ってから、この言葉が一般化されていったのです。

【1971年】日本初のプレーン「明治プレーンヨーグルト」発売

「明治ブルガリアヨーグルト」

ヨーク誕生の翌年、日本で初めてプレーンヨーグルトが発売されます。なんと「チゝヤスヨーグルト」の発売からは54年後のこと。こんなにも長い間、ヨーグルトは加糖タイプだけ存在していたのですね!

プレーン誕生のきっかけは1970年の大阪万博。ブルガリアのパビリオンで提供されたヨーグルトを食べた明治乳業(当時)の職員さんがあまりの違いに驚き、本場の味を日本にも!と発売されたのが「明治プレーンヨーグルト」です。

当時は牛乳パック型の容器で販売されており、酸っぱくドロっとしたプレーンヨーグルトは抵抗を抱かれることも多かったそう。

発売翌年には、ブルガリア共和国大使館から国名の使用許可が下り、1973年には商品名が「明治ブルガリアヨーグルト」に。さらに1981年には牛乳パック型容器から現在の形状の容器へと進化を遂げます。

現在は「明治ブルガリアヨーグルト LB81 プレーン」が発売中。その歩みが日本のヨーグルト食文化に与えた影響は計り知れません。

ちなみに先ほど掲載した商品をくるりと回転させると…

「明治ブルガリアヨーグルト」復刻パッケージ

まさにその1981年当時のデザインが!
ちょうど2024年の今、明治ブルガリアヨーグルト50周年を記念した、4種類の復刻パッケージが出ているようですので、ぜひ探してみてください。

【1994年】ヨーグルトの新定番が誕生!「森永アロエヨーグルト」

「森永アロエヨーグルト」

今やヨーグルトに当たり前のように入っているアロエ。この組み合わせを編み出したのは森永乳業さんです。

開発のきっかけは、1990年代に起こったナタデココブームでした。これに次ぐ新たな食材をと、ヘルシーさや食感を鍵にあらゆる食材を試した結果、たどり着いたのがアロエだったそう。

「森永アロエヨーグルト」

その食感は、ぶりんぶりんのシャッキシャキ!瑞々しいアロエの食感はヨーグルトのクリーミーさを引き立てるのにもってこいの相棒です。

ちなみにヨーグルトに使用される葉肉は「アロエベラ」という食用の品種のもので、ほぼ無味無臭。アロエヨーグルトの味としてみんなが想像するあの味は、ライチやグレープフルーツなどの果物がモデルになっています。

メーカーやブランドによって微妙に味付けが違うのも楽しいところですね。

【1996年】初のトクホ!特定保健用食品「おなかへGG!」

「おなかへGG!」

もともとヘルシーな食品として認知されていたヨーグルトですが、さらにその道を深める出来事がありました。

それがタカナシ乳業さんの「ドリンクヨーグルト おなかへGG!」の特定保健用食品認定です。

このヨーグルトは生きたまま腸に届くLGG乳酸菌(ラクトバチルスGG株)が配合されており、乳酸菌を関与成分とした発酵乳として初の特定保健用食品に認定されました。

お腹に乳酸菌が届くというニュアンスから「おなかへゴーゴー!」と読みがちですが、商品名の読みは「おなかへジージー!」。

LGG乳酸菌はその発見者であるGorbach(ゴルバッハ)教授、Goldin(ゴルディン)教授の頭文字にLactobacillus(乳酸桿菌)の頭文字を繋いだものであり、商品名のGGもここから来ているようです。

ヨーグルトはさらりとした質感で、かなり甘めの味付け。酸味がないのでヨーグルトがあまり得意ではない人にもおすすめです。

【2000年】機能性ヨーグルトの扉を開いた「明治プロビオヨーグルト LG21」

明治プロビオヨーグルト LG21」

長らく腸内環境に良いものと認識されてきたヨーグルトに大きな転機が訪れます。

それは、明治さんから発売された「明治プロビオヨーグルト LG21」。「腸」ではなく「胃」に着目して選び抜かれた乳酸菌を使用したヨーグルトです。

菌の名前がそのまま商品名になり、ピンポイントの健康ニーズにアプローチしてブランディングされる食品は他に例を見ません。

現在のヨーグルト売り場に免疫、内臓脂肪、口内環境などの細かなニーズに向けた機能性ヨーグルトが多種多様に並んでいるのは、このLG21のヒットがあったからこそ。

それまで女性が主要購買層とされてきたヨーグルトですが、胃にアプローチするLG21、プリン体にアプローチする「明治プロビオヨーグルトPA-3」などは広告から察するに男性がターゲットと思われます。

機能を付加価値とすることで、今までヨーグルトを積極的に手に取ってこなかった方々にもリーチすることができるようになったのは画期的な出来事でした!

【2008年】初の大容量アルミパウチ「岩泉ヨーグルト」

「岩泉ヨーグルト」

大谷翔平選手が「世界一」と絶賛したことでも話題の岩泉ヨーグルト。最近少しずつ見かける機会も増えてきたこのアルミパウチ容器は、当時の岩泉乳業さんがこの「岩泉ヨーグルト」で初めて取り入れた素材です。

意外なことに、岩泉ヨーグルトも開発当初は一般的なカップヨーグルトでした。それをホテルへ納品するため大型化すべく、ホームセンターで素材探しをしていた山下社長の目に留まったのはアルミパウチ。

アルミは熱伝導性に優れる素材のため、発酵の温度管理に適しています。さらに、光や酸素の遮断性が高く、中身がより新鮮に保たれるというメリットもあります。

このアルミパウチの中に原料を充填し、発酵させてヨーグルトにすると、従来の容器ではなしえなかった強いもっちり感や、乳本来の甘みを感じるヨーグルトに仕上がったそう。

開発当時は2kgサイズでしたが、市販用に半分のサイズに展開されたのがこの1kgパウチ。ハサミで開封し、お玉ですくいだす必要があるため、少し手間がかかるのですが、絞り口をつけないのはもちもち食感を損なわないための譲れないこだわりです。

ヨーグルトをうまく取り出すコツは、小型のお玉を使用し、パウチの外側からお玉を握るように力を加えること。ヨーグルトがプリッと切れてくれるので、パウチの口を汚さずに取り出せます。

左手でパウチの上からお玉を握っています
左手でパウチの上からお玉を握っています

器に移すとこんもり!噛めそうなほどの弾力と、生乳から作られるコクたっぷりの味わいはさすがです。

「岩泉ヨーグルト」盛り付け

ちなみに岩泉ホールディングスさんのある岩手県では、スーパーのヨーグルトコーナーがアルミパウチだらけ!

アルミパウチを独占せず、みんなの技術として解放された山下社長の心意気により、今では岩手県を中心にあらゆるご当地ヨーグルトでこの容器が活用されているのです。どれもこれも1〜2kgサイズで売られており、ヨーグルトの食習慣の違いに驚きますね。

【2011年】蓋裏革命!ヨーグルトがつかない「ビヒダスヨーグルト」パッケージ

「ビヒダスヨーグルト」

しばしば議論を巻き起こす、蓋裏のヨーグルトを舐めるか舐めないか問題。森永乳業さんの「ビヒダスヨーグルト 4ポットシリーズ」にて、実にスマートな解決策が提示されました。

その名も「TOYAL LOTUS(トーヤルロータス)」。水を玉のように弾く蓮(LOTUS)の葉の構造を参考に、東洋アルミニウムさんと共同で開発された包装材料です。

「ビヒダスヨーグルト」ヨーグルトが蓋裏につかない

開封してみるとご覧のとおり。もう「どうしよう、誰も見てないから舐めてもいいかな…」なんて悩む必要がありません。

試しにスプーンですくったヨーグルトを乗せてみると、ヨーグルトが玉のように弾かれています!

「ビヒダスヨーグルト」蓋に乗せてみる

つるっと流れて落ちてしまうので、試される方はお気をつけて。

【2011年】日本初上陸!ギリシャヨーグルト「パルテノ」

「パルテノ」

記事の最後を飾るのは、森永乳業さんの「ギリシャヨーグルト パルテノ」。わたしがヨーグルトにハマるきっかけとなった商品で、プライベートでは「パルテノ様」と呼ばせていただいております。

ギリシャの伝統的な製法を踏襲し、ヨーグルトを発酵後に水切りすることでたんぱく質を約3倍にまで濃縮させたというこの商品。スプーンを逆さにしても落ちない濃厚さは衝撃でした。

「パルテノ」スプーンを逆さにしても落ちない濃厚さ

この登場を皮切りに、高たんぱく質ヨーグルト市場が広がってゆくのですが、「パルテノ様」はストイックに走りすぎないところが推しポイント。脂肪ゼロタイプを除く全商品に乳脂肪分が含まれており、お乳の甘みを感じるクリーミーな仕上がりです。

さらに「パルテノ はちみつ付」にはヨーグルト専用の蜂蜜が別添されており、自分でとろーりと回しかける体験がとても優雅。

「パルテノ」別添の蜂蜜

この黄金色の蜂蜜が垂れるギリシャヨーグルトのビジュアルたるや!舌にダイレクトに蜂蜜が触れるので、濃厚なギリシャヨーグルトに負けずにくっきりと味を感じさせてくれてとっても華やかです。

「パルテノ」蜂蜜をかけたヨーグルト

味や機能に加えて「体験」も提供してくださる「パルテノ様」、なんて素敵なんでしょう。

以上、日本のヨーグルトの歴史を切り拓いてきた9商品を年代を追ってご紹介しました。

いろいろなメーカーさんのご尽力によって発展してゆくヨーグルト界。これからどんな「初めて」に出会えるのか、ヨーグルトマニアとしてずっとずっと楽しみにしています!

記事を書いた人

向井智香
向井智香

大手からご当地まで日本中のヨーグルトをレビューするヨーグルトマニア。各地の牧場や工場を巡って酪農・乳業を学び、講演会やワークショップなどを通してヨーグルトのファンづくりに励む。「ヨグネット」代表。

ヨーグルトの本(2022年/MdN)
https://books.mdn.co.jp/books/3221403035/
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