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ヨーグルトはとっても扱いやすい素材。「不器用でめんどくさがり」な私が断言します/若山曜子さん【わたしをささえるもの】

ヨーグルト愛の人々 2023.11.27

ヨーグルトはとっても扱いやすい素材。「不器用でめんどくさがり」な私が断言します/若山曜子さん【わたしをささえるもの】

クリエイティブで感動的な料理を生みだすシェフや料理人には、必ず尊敬する人や忘れられない思い出など「ささえる存在」があります。それは、毎朝食べるヨーグルトのように当たり前にあるからこそ、あえてメディアで話さなかったことも多くありそうです。

連載「わたしをささえるもの」では、そんな「シェフをささえる存在」に注目し、シェフや料理人の意外な一面や、人生観・仕事観に触れながら、食のプロならではのヨーグルトの意外な使い方や魅力を語ってもらいます。

連載第8回は、著書『はじめまして、おやつ』が「第10回 料理レシピ本大賞 in Japan 2023」のお菓子部門で準大賞を受賞するなど、人気レシピ本を次々に送りだす菓子・料理研究家の若山曜子さんです。

20代でフランス留学し、パリ市商工会議所が運営する料理学校「エコール・フェランディ」の社会人製菓コースで学んでフランス国家資格(CAP)を取得して帰国した若山さんでしたが、自身は「不器用でめんどくさがり」だといい、レストランやパティスリーで働くよりも料理研究家に向いていたといいます。

「味の記憶を消したくない」という思いで再現することを目指した

「子どもの頃から食べることが好きでした」という若山さんですが、話しをさらに聞いていくと、ただ食べるのが好きなだけではない、好奇心旺盛な少女だったようです。

「東京と岡山を行き来していた父に連れられて東京で食べたティラミスが、子どもながらに衝撃的だったんです。トロンとやわらかい状態ですくって食べるケーキに『ショートケーキのような形が保たれていないのはなぜ?』と。帰ってから本や雑誌で調べてみると、どうやらマスカルポーネというチーズがあることを知って興味を抱くような、ただおいしいだけでなく食材や背景も知りたがる子どもでした」

おいしかった料理や初めて食べた料理を「これが食べるのは最後かもしれない」と考え「この味の記憶を消したくない」という思いから、作ったシェフに根掘り葉掘り作り方や材料を聞いていたともいいます。それがやがて「同じ味を再現できるようになりたい」という気持ちに変わっていきました。

当時の夢は、ケーキ屋さんになること。製菓の専門学校に通うことを希望していましたが「製菓を学ぶのは大学を卒業してからでもできる」と父親に反対され大学に進みました。大学では、フランス菓子に興味があったこともありフランス語を学びます。

「今でこそフランス菓子を作っていますが、アメリカが好きな子でした。アメリカの音楽や映画が好きで、フランスはまったく興味がなかったんです。だから、お菓子作りやパン作りをニューヨークで習いたいと思っていました」

大学1年生のときにイタリアやフランスなどヨーロッパを数週間かけて巡った際にも、フランスの印象はそれほど強くなかったそうです。さらに在学中に1カ月休学してパリの伝統的な料理専門学校「ル・コルドン・ブルー」でも学びましたが、日本人が多い校風に馴染めなかったと若山さんは振りかえります。

その後、念願だったニューヨークの専門学校の訪問など留学の準備のため渡米します。しかし、実際に学校に行ってみて違和感に気づいたそうです。

「私が教わろうとしていたのはM.O.F.(フランス国家最優秀職人章)をもつフランス人シェフがパティシエコースのトップでした。つまりアメリカの製菓学校は、フランスの技術を学ぶ場所だったんです。アメリカよりも、ヨーロッパのお菓子やパンの方がおいしいと感じていましたし、わざわざアメリカに来てフランス人から製菓を学ぶなら、フランスで直接学んだ方がいいじゃないかと思うようになりました」

「味の記憶を消したくない」という思いで再現することを目指した

製菓をきちんと学ぶならここしかない。パリでフランスの国家資格を獲得

お菓子作りの知識と技術を身につけるならフランスで学ぶのがいい。そう考えた若山さんは、ル・コルドン・ブルー時代に知り合った日本人のパティシエから、パリ市商工会議所が運営する職業技術養成学校の「エコール・フェランディ」を紹介されたことを思い出します。さっそく資料を取り寄せてみると、自分が学びたかったことが学べると感じました。

「ル・コルドン・ブルーのレシピはおいしいですし、講義もじっくりひとつの料理を学ぶので、帰国して料理教室など開く人にはいいのですが、私のような不器用な人間が、上手くなるための技術を身につけるのは難しいと思いました。しかしエコール・フェランディは、技術を得て転職したいと考える人が通う場所ですので、製菓技術はもちろん大量に作るオペレーションやロスを少なくする方法が学べるなど、実践的な技術を学びたい自分にとってはピッタリだと感じたんです」

週3日学校に通っていた若山さんは、残りの2日でパリの星付きレストランやパティスリーに研修に入って腕を磨きます。そしてフランス国家調理師資格(CAP)を取得した若山さんは、エコール・フェランディを卒業、帰国後は日本のレストランやパティスリーで働きました。

しかし、実際に続けていけるかという不安があったと若山さんはいいます。というのもフランスで修業していた頃、調理場で働いている女性をほとんど見かけることがなかったですし、日本の現場では、長時間労働で、体調を崩し辞めていく女性従業員も少なくなかったからです。

「働いているうちに私は人と比べて体力もなく、器用でもないことが、だんだんわかるようにもなりました。でもただ辞めてしまっては、せっかく得た技術や知識がもったいないとも思っていました。そんなことを感じていたあるときに自分のレシピが雑誌に載ったんです。こうやって料理を残すことができたらいいなと思い料理研究家になることを考えはじめました」

「味の記憶を消したくない」という思いで再現することを目指した

「雑」で「めんどくさがり」が料理家に向いている

子どもの頃から、感動した料理を再現するために手元にあったのはシェフや料理研究家のレシピ本でした。じつは大学卒業後、留学をせず料理書籍や雑誌を出す出版社に入ろうと応募したほどで、本を制作することへの憧れもありました。

料理研究家として本を出したい——。そして果敢にも出版社に売り込みをかけると、見事に企画が通ります。当時はブログのランキングで人気を得たで人気を得た人が出版するレシピ本がはやっていて、フランスで国家資格を取ったという若山さんの経歴は、かえって珍しく映ったようです。

2009年に『フライパンカフェ』(主婦と生活社)と『スイーツマジック』(文化出版局)、『パウンド型ひとつで作るたくさんのケーク』(主婦と生活社)の3冊を立て続けに完成させて、料理研究家としての活動を本格的にスタートさせます。

「当時の担当編集さんからレシピ系のブログのランキングに参加ほしいといわれて始めてみたものの、誰に向けて書いているのかがわからなくて、『私には向かないな』と思っててすぐ止めてしまったんです。誰かに作ってみてほしいという思いはあるのですが、それよりも食べた味を再現したり、食材の組み合わせを考えたりして、おいしいものを作るということに単純に魅力を感じるんですよね」

2009年以来、若山さんは、14年間で70冊以上のレシピ本を出版してきました。売れ続ける本を作るために心がけているのは「読者目線であること」と若山さんはいいます。しかし、目の前にいない読者のニーズを想像することは、本作りのプロである編集者ですら難しいことです。

「私自身が料理本が好き。そして本を見ながら作るのが好きだから、常に自分が欲しい本になっているかどうかを考えて作っています。不器用でめんどくさがりな私が、手にとって作りたい!と思える本はほとんどの人が作れるんじゃないかなと。『手先が不器用』と良くいっていますが、じっさいは『作業が雑』(笑)。私のように雑でめんどくさがりな人でも作れるように、あまり味に大きな影響のない作業は省いて簡略化すれば、めんどくさがらずにできる人が多くなると思うんです。それに『これはおいしさに繋がるから簡略化できない』というポイントをきちんと説明してあげれば、みなさん頑張って作ってくれる。そういう見せ方もできると思います」

「雑」や「めんどくさがり」と自分を嘲笑するように話す若山さんですが、フランスや日本でトップレベルの環境を経験したからこそ言える言葉でもあるのです。

「味の記憶を消したくない」という思いで再現することを目指した
「味の記憶を消したくない」という思いで再現することを目指した
「味の記憶を消したくない」という思いで再現することを目指した

冷蔵庫から出してすぐに使えるヨーグルトはレシピで重宝する

フライパンで手軽に作れる料理レシピから、チーズやサツマイモなど食材を限定したお菓子のレシピまで幅広いテーマで活躍する若山さんは、2017年に『ヨーグルトの冷たいお菓子と焼き菓子』(世界文化社)も発表しています。

「『わたしをささえるもの』のインタビューで、多くのシェフの方々がお話しされているように、ヨーグルトはそのままでも食べられるし、食材としても使えて、調味料にもなる。お菓子にも料理にも使える万能な素材ですよね。酸味も独特でコクもあります。フランス菓子を学んだ私からすると、軽さとまろやかさを出す素材でもあると思います」

本でも紹介されている水切りしたヨーグルトにホイップした生クリーム、グラニュー糖、粉ゼラチンを加えただけで完成する軽やかなヨーグルトムースや、インスタグラムで話題になったヨーグルトを水切りした際に出るホエイを生地に加えるホエイマフィンなど、たくさんのヨーグルトのレシピを生みだしてきました。

「実は、不器用でめんどくさがりな人にピッタリなのが、ヨーグルトなんですよ」という若山さんは、茶目っ気たっぷりの笑顔で教えてくれます。

たとえば、料理のレシピで酸味とコクがあるクリームチーズを使う場合、他の材料と混ぜ合わせるためにやわらかくする必要があります。ひと手間かかるだけでなく、温めすぎてしまうなど失敗する可能性もあります。これがヨーグルトだと冷蔵庫から取り出してすぐに使えます。さらに他の材料とも混ざりやすく扱いやすいのも「不器用でめんどくさがり」な人にピッタリだといいます。

「お菓子だけでなくて料理にも使うのも好きです。ヨーグルトにしょっぱいものを合わせるのは、日本にまだ馴染みがありませんが、たとえば焼き魚に、塩を加えたヨーグルトソースと、レモン汁、ハーブ、ナッツをたっぷりかけたらギリシャとかトルコっぽい地中海風のひと皿になります。ヨーグルトは、いろいろな食材をまろやかに調和させてくれる役割を担うことも多いんですよ。冷蔵庫に常備されている食材なので、いろいろ使ってみてほしいですね」

若山さんのヨーグルトを使ったお菓子や料理のレシピはInstagram(@yoochanpetite)で「#毎日のヨーグルトレシピ」でまとめられています。簡単で作りたいと思えるレシピですので、“不器用でめんどくさがり”な人ほど、ぜひ作ってみてください。

話をしてくれた人

若山曜子

若山曜子

東京都生まれ、岡山県出身の料理研究家。東京外国語大学フランス語学科卒業後、パリへ留学。パリ市商工会議所が運営する料理学校「エコール・フェランディ」の社会人の製菓コースで学ぶ。在学中はパリのパティスリーやレストランに研修で入って研鑽を積んだ。パティシエ、グラシエ、ショコラティエ、コンフィズールのフランス国家資格(CAP)を取得して帰国。国内のレストランやパティスリーで勤務した後、料理研究家に転身。2009年に『フライパンカフェ』(主婦と生活社)と『スイーツマジック』(文化出版局)、『パウンド型ひとつで作るたくさんのケーク』(主婦と生活社)の3冊を立て続けに完成させて、料理研究家としての活動を本格的にスタートさせた。2023年までに出版したレシピ本の数は70冊以上に及ぶ。現在はオンラインの料理教室のほか、書籍や雑誌、テレビ、企業へのレシピ提供などで幅広く活躍。作りやすいレシピに定評がある。

公式サイト
https://tavechao.com/
Instagram
https://www.instagram.com/yoochanpetite/

フォトグラファー

大城為喜

滋賀県甲賀市出身。ポートレート、ライフスタイル系メディアなどを中心に活動。

Webサイト
https://www.oshirotameki.com/

記事を書いた人

江六前一郎
江六前一郎

千葉県八千代市生まれ。食の編集者。2012年から7年間、食の専門誌『料理王国』の編集部に在籍し、のべ400店以上の飲食店を取材した。副編集長も経験。2020年からフリーに。雑誌・web、地方自治体や企業のオウンドメディアの企画・編集・執筆を通して、レストラン体験の素晴らしさやシェフの個性や独創性を広く伝えることを目指す。

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