以前「みんなのヨーグルトアカデミー」の連載「わたしをささえるもの」で取材した、奥野義幸シェフと米澤文雄シェフ。国内外で活躍するふたりのカリスマによる、コラボレーションレストラン「Trattoria Tabulé(トラットリア タブレ)」が2023年10月5日にオープンし大きな注目を集めています。本稿ではヨーグルトを使ったメニュー紹介のほか、両シェフのインタビューなどから同店の魅力をレポートします。
店名に掲げる名物にはヨーグルトを使用!
「トラットリア タブレ」誕生のきっかけは、「Closetable」というオンラインサロンにあります。同サロンはコロナ禍中の2021年11月に、奥野、米澤両シェフが共同オーナーとして創設されました。メンバーは国内26都道府県、海外5カ国にわたり、料理人や生産者から建築士、デザイナー、マーケッターなど職業はさまざま。ただ、いずれも「食」に興味をもち「食で未来を創る」というコンセプトに賛同して集っています。
その活動内から多彩なプロジェクトが発足し、いまや市場展開に繋がるコミュニティへと成長。そうした発展から機運が高まる中でオフラインの場が求められ、「トラットリア タブレ」が産声を上げたのです。
同店の料理テーマは、今までにない新しい食ジャンル「中東イタリアン」。欧米を中心に世界の美食家を虜にしている中東料理ですが、日本における認知度はまだまだ低いのが実情です。しかし近年は食の多様化やグローバル化とともにスパイスやスーパーフードへの理解が深まり、中東料理も徐々に浸透。そこに、両シェフが得意とするイタリアンを掛け合わせて独創的な「中東イタリアン」が生まれたのです。
店名にもなっている「Tabulé(タブレ)」とは、中東において特にレバンテ地方の家庭的なサラダのこと。この一皿をシグネチャーとし、ほかにもメニューは日本でも比較的知られている「フムス」や「ファラフェル」をはじめ前菜15品、メインとパスタで8~10品、デザート3~4品ほどで構成。クミン、コリアンダー、カルダモンなど多くのスパイスを使った中東料理の特徴を生かしつつ、日本人に受け入れやすいイタリアンスタイルで提供します。
では、こうした「中東イタリアン」はどんな味わいなのでしょうか。内覧会で提供された代表的なメニューのレビューとともに紹介しましょう。
ヨーグルトほかスパイスやハーブが多彩に華やぐ
まずは「シグネチャータブレ ヨーグルトソース」から。こちらはブルグル(乾燥挽き割り小麦の一種)、キヌア、パセリに季節の野菜や旬の果物を加え、水切りヨーグルトが全体をまとめるソース役に。
この日の野菜はキュウリ、トマト、パプリカ、紫玉ネギ、スプラウトなど。フルーツにはリンゴ、梨、プルーンが使われていました。ユニークな食感を生んでいたのが、クリスピーなアクセント。こちらはキヌアを揚げたもので、あしらわれたクミンとともに香り高さやコクを演出。味わいが、食べる場所によって変わる点もユニークな魅力です。
次は熟成ポテトをメインに使ったサラダ。この日は北海道の生産者「とかち井上農場」の「雪蔵甘熟メークイン二冬越」でした。そこに蒸したムール貝と、一般的な赤色のアリッサではなく緑色に仕上げたオリジナルの「グリーンアリッサ」が華をそえます。
「グリーンアリッサ」は、白ゴマベースの中東のポピュラーなタヒニソースに、青唐辛子とイタリアンパセリ、パクチーを調合。さらにバジルソースで爽やかさをプラス。2年熟成のポテトは甘みが豊かで、キュウリや玉ネギといった野菜とも相性がよく、アリッサのエスニックなハーバル感も絶品です。
3品目も驚きに満ちた一皿でした。それは、カリフラワーを大胆に使ったメニュー。米澤シェフ曰く、イスラエルのテルアビブにはカリフラワーローストの有名店があり、またその味は米国NYにも渡っており人気を博しているとか。こちらにインスパイアを受けたのが、次の料理です。
味も独創的で、カリフラワーはしっとりふわっとした食感。ソースにはカルダモン、カレーパウダー、ライムなどを加えており、甘じょっぱさとエスニックな風味が斬新です。また、スモークされたパプリカパウダーが、まるでカツオ節のような燻香を演出。カリフォルニア産くるみのアクセントも絶妙です。
ラストは、いわば「中東イタリアン」の真骨頂といえる一皿。ナッツ類を多用する中東伝統のミックススパイス調味料、デュカを活用したプリモピアットがお目見えしました。ちなみにこちらの麺には、岡山「富士麺ず工房」の生パスタブランド「ハタフレスカ」が使用されています。
ジェノバソースはピスタチオ、ケール、レモンピールによる、コクとビター感が独創性な味わい。キタッラ特有の、しなやかでもちもちとした食感にマッチします。そして、デュカには頻用されるアーモンドの代わりにピスタチオを使い、クミンシード、コリアンダーシード、フェンネルシード、白ゴマなどで調合。ほかにない、新感覚のジェノベーゼに仕上げられています。
各シェフが語るヨーグルトの可能性
内覧会では特別に、両シェフへのインタビューが叶いました。まずは改めて、料理に使う際のポイントや、その可能性について。まずは米澤シェフから想いを語ってもらいました。
「以前お話ししたように僕はずっと中東料理に注目しており、今回中東イタリアンの形でタブレが実現しました。となれば、やっぱり現地で太古から料理に使われているヨーグルトは欠かせません。また、改めて料理とヨーグルトの相性が抜群にいいなって思うんですよね。ヨーグルトは水分量をコントロールすることで自由度がさらに広がります。ソースにしたり、隠し味にしたり、味の中和に使ったり。今後もさらなる可能性を探っていきたいですね」(米澤シェフ)
中東をはじめ、欧米でもヨーグルト料理は数多くあるものの、日本ではいまだスイーツとしてイメージする方が大半でしょう。ただ、そうした食文化も徐々に変わっていくのでは、と奥野シェフは言います。
「東京を筆頭に、日本はどんどんインターナショナルになってくると思います。インバウンドも増えていますし。そのうえで僕らみたいなアプローチで仕掛ける料理人もいれば、本格的な中東料理を提供するレストランも増えていますよね。となれば、もっと必然的にヨーグルトの使用量も上がってくると考えています。それに、ヨーグルトメーカーの方々もマーケティングで料理の活用例を提案する機会も増えていくんじゃないかなって。僕はすごく可能性を感じています」(奥野シェフ)
なお、今回の内覧会で提供された以外でオススメのヨーグルト料理を聞いたところ、「焼きなすのジンジャーマリネ ザクロとドライトマト」とのこと。こちらは、中東各国の伝統料理である焼きナスにインスパイアを受け、「トラットリア タブレ」流に昇華させた一皿です。
中東というと未知な世界に思えるかもしれませんが、「中東イタリアン」ならエントリーにもやさしいはず。スパイスやハーブの使い方とともに、ヨーグルト活用の参考にもなるかもしれません。まずは「トラットリア タブレ」のおいしさで、さらなるヨーグルトの魅力を体験してみませんか?
Trattoria Tabulé(トラットリア タブレ)
住所:神奈川県横浜市西区みなとみらい4-2-1 LIVING TOWN 1F
電話番号:045-307-6333
予約可否:予約可(WEB予約システムあり)
営業時間:12:00~15:00(L.O. 14:00)、17:30~22:30(フードL.O. 21:00/ドリンクL.O. 21:30)
定休日:水曜
お店の公式Instagram
https://www.instagram.com/tabule_trattoria/