水切り製法で濃厚。日本のギリシャヨーグルトのパイオニア「パルテノ」を増やす。

ヨーグルトの食べ方・楽しみ方が広がった近年、飛躍的に知名度を上げたのが、水切り製法のギリシャヨーグルト(グリークヨーグルト)だ。
なかでも森永乳業の「パルテノ」は、日本で2011年に商品化された、ギリシャヨーグルトの先駆けである。

「菌で味はどう違う?」という今回のテーマとは少しずれるが、「パルテノ」を牛乳で増やしたら、水を切らなくてもあの固めの質感が楽しめるのだろうか。ヨーグルトメーカーを40℃ 6時間に設定して比較してみた。
ほぼ「パルテノ」。水切りせずに水切りヨーグルトの濃厚な質感を再現。

これが、驚くことにほぼ「パルテノ」だった。本物の「パルテノ」は、混ぜて滑らかにしたクリームチーズのような質感だが、自家製パルテノはもうちょっと軟らかい。
なんといっても、水を切らなくてもよいくらいしっかりとしていることにびっくり。牛乳で水分を増やしているにも関わらず、固めのテクスチャーで、濃厚な風味に仕上がった。
理由を推測するに、パルテノの原料は生乳ではなく「乳製品(国内製造)」だからかと思われる。
前回の記事「牛乳で自家製ヨーグルトの味はどう変わる?人気のヨーグルトメーカーで比較してみた」では、脱脂粉乳が入っているヨーグルトのほうが固まりやすく、生乳100%を原料としたヨーグルトのほうがとろとろとした食感になりやすいことがわかっている。
ヨーグルトに使われる乳製品としては、脱脂粉乳(スキムミルク)、クリーム、濃縮乳・脱脂濃縮乳たんぱく(ミルクプロテイン)などが考えられるが、恐らく高温処理した乳製品によって、しっかりと固まっているのではないだろうか。
パルテノの説明には「ヨーグルト成分(たんぱく質)を3倍濃縮(普通牛乳を発酵させたヨーグルトの約3倍のたんぱく質)」とあるので、原料の成分コントロールが鍵を握っているのは間違いない。
このままでも料理に使えそうだが、さらに水を切って料理に使えば、一般的なヨーグルトより短時間で水が切れる。これはおもしろい結果だった。
森永乳業「パルテノ」
[種菌]非公開(ブルガリア菌とサーモフィルス菌か?)
[商品情報]https://partheno-gy.jp/
[加熱温度と時間]40℃ 6時間
[ヨーグルトと牛乳の比率]50g:450g
[再現度]★★★★(少し水分が多く仕上がった)
軽やかで重たさゼロ。乳酸菌とビフィズス菌の両方が入った「毎日食べたい湯田ヨーグルト」を増やす。

最後は「毎日食べたい湯田ヨーグルト(プレーン)」だ。なぜ湯田ヨーグルトか?というと、私が好きだからである(笑)。好きなものが増やせるなら、こんなに嬉しいことはない。
ちなみに、家ではアルミパックに入った「プレミアム湯田ヨーグルト」を常備している。こちらは完全遮光・空気の入らないパッケージで、乳酸菌の活動に最適な環境が保たれており、リッチな生クリーム入り。もっちりとした食べ心地と、乳脂肪特有のまろやかなおいしさがある。
しかし、店の在庫が長らく切れており、同じメーカーのこちら(上の写真)を採択。菌はビフィズス菌(BB-12)、アシドフィルス菌(LA-5:代表的な乳酸菌)だ。
メーカーサイトによると「岩手県産生乳100%使用の毎日食べたいヨーグルト。酸味が控えめで食べやすく、まろやかな味わいです」とある。口にすると、アルミパック入りよりさらりとして軽やかな印象を受けた。

このヨーグルトを40℃、6時間でヨーグルトメーカーにセットした。
やさしさ増し増し。おだやかなミルク味&やわらか杏仁豆腐食感のヨーグルトに。
開けてみると、表面にうっすら乳清がういている。生乳100%ヨーグルトは、とろとろとして固まりにくいという認識があったが、スプーンですくってみると、ふるふると軟らかく固まっていた。

食感は、高級中華料理店で食べる、めちゃめちゃ軟らかめの杏仁豆腐。口にすると、若干の粉っぽさ、ざらつきを感じたのは、加熱前にヨーグルトと牛乳を混ぜる回数が足りなかったのかもしれない。
味わいは本家本元の「酸味を抑えた食べやすくまろやかな味わい」を踏襲。加えた牛乳と方向性が重なって、やさしいミルク感が口に広がり、いい意味でニュートラルなヨーグルトに仕上がった。
なお、「ナチュレ恵 megumi」同様、乳酸菌は生き残り、ビフィズス菌はほぼないと考えられる。健康効果という点で再現性はなくても、「毎日食べたい湯田ヨーグルト(プレーン)」の風味が好きなら、同じ方向性の味わいは得られそうだ。

湯田乳業「毎日食べたい湯田ヨーグルト」
[種菌]ビフィズス菌(BB-12)、アシドフィルス菌(LA-5:代表的な乳酸菌)
[商品情報]https://shop.yudamilk.com/?pid=111064480
[加熱温度と時間]40℃ 6時間
[ヨーグルトと牛乳の比率]50g:450g
[再現度]★★★(滑らかさに欠けた。ビフィズス菌は増えない)
菌の個性を生かすならクレモリス菌がベスト。ビフィズス菌の特徴はほぼ消滅?

種菌を変えたら、自家製ヨーグルトはどう変わるのか? ヨーグルトメーカーで増やす環境下ではあるが、増やしてみて分かったのは、風味に影響を及ぼすのはほぼ牛乳というシンプルな答えだ。
ただ、菌によって、作り出される風味や質感は変わる。おおざっぱにいうと、乳酸菌は乳酸のまろやか&爽やかな味わいを生み出す。ビフィズス菌は乳酸に加えて酢酸も生み出すため、さらにツンとした味が加わる。
しかし、ビフィズス菌は空気中で生き延びにくく、家庭で増殖(再生産)は難しい。その結果、ヨーグルトを種菌にしてヨーグルトをつくると、総じて酸味は少なくなるといえる。
もし、酸味のあるヨーグルトが好きなら、作ったヨーグルトを冷蔵庫に一晩以上おいておくといい。なぜなら、ヨーグルトの乳酸菌は生きており、まだ乳の中に残っている乳糖をエサにして、少しずつ乳酸を作り続けているからだ。
日本と世界では違う!? 知られざるヨーグルトの「規格」

ちなみに、日本の乳等省令(乳及び乳製品の成分規格等に関する命令)では、はっ酵乳(発酵乳)に菌の指定はない。
その定義は、菌の種類を問わず「無脂乳固形分が8.0%以上あり、1mlの中に1,000万個以上の乳酸菌または酵母が生きている」こと。つまり、この菌を使ったらヨーグルト、という決まりはないのだ(そもそも「ヨーグルト」という食品分類区分は日本にないのだが、詳細は割愛する)。
一方、国連のFAO(食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)が共同で設立したコーデックス委員会(Codex Alimentarius Commission)では、ブルガリア菌(L. bulgaricus)と、サーモフィラス菌(S. thermophilus)の2種で発酵させたものを「ヨーグルト」と定義している。
つまり、日本のヨーグルトは、国際基準では「発酵乳ではあるが、ヨーグルトではない」ものもあるわけだ。近年、日本のヨーグルト市場は、菌のはたらきによってさまざまな健康効果が期待できる機能特化型の商品が増えているが、これは実に日本的な発展といえるのかもしれない。

