毎日ヨーグルトを食べるなら、自家製にすると、ぐっとお安くヨーグルトが作れる。
作り方は簡単。少量のヨーグルトに牛乳を注ぎ、ヨーグルトメーカーにセットするだけ。物価上昇の時代、家計と胃袋の両方にうれしいのが自家製ヨーグルトだ。
こうしたニーズが高まっているのか、当サイトの「牛乳で自家製ヨーグルトの味はどう変わる?人気のヨーグルトメーカーで比較してみた」という記事は、公開以来長く読まれている。
実際、牛乳を変えると、ヨーグルトの風味や固まり方は劇的に変わる。ならば、種菌となるヨーグルトを変えたら、自家製ヨーグルトの味や質感はどう変わるのだろうか。
そこで今回は、同じ銘柄の牛乳を使い、“種菌”となるヨーグルトを4種類用意し、自家製ヨーグルトを作り比べてみた。
果たして、元のヨーグルトと同じような風味と質感のヨーグルトは“複製”はできるのだろうか?
目次
- 実験方法
- クレモリス菌が決め手。粘ってもっちり、フジッコ「カスピ海ヨーグルト」を増やす。
- まるで白い「ぐでたま」。菌のチカラで保水力抜群、ねばりもしっかりしたヨーグルトに。
- トクホの中のトクホ。隙のない健康訴求ヨーグルト「ナチュレ恵」を増やす。
- 牛乳の風味がしっかり。酸味が少なく、ミルク感のあるヨーグルトに。
- 水切り製法で濃厚。日本のギリシャヨーグルトのパイオニア「パルテノ」を増やす。
- ほぼ「パルテノ」。水切りせずに水切りヨーグルトの濃厚な質感を再現。
- 軽やかで重たさゼロ。乳酸菌とビフィズス菌の両方が入った「毎日食べたい湯田ヨーグルト」を増やす。
- やさしさ増し増し。おだやかなミルク味&やわらか杏仁豆腐食感のヨーグルトに。
- 菌の個性を生かすならクレモリス菌がベスト。ビフィズス菌の特徴はほぼ消滅?
- 日本と世界では違う!? 知られざるヨーグルトの「規格」
実験方法
①種菌となるヨーグルトと牛乳を1:9の割合で混ぜ合わせる。
②ヨーグルトメーカーに入れて保温する。保温温度と時間は、それぞれのヨーグルトに含まれる特徴的な菌(乳酸菌)の増殖に適した温度とする。
使用したヨーグルトメーカーは、前回同様アイリスオーヤマのヨーグルトメーカー、KYM-015。牛乳パックのままメーカーに入れて保温できるので衛生的で作業が楽だ。

また、使用した牛乳は「産地限定 北海道根釧 よつ葉牛乳」500mlパック入りだ。
選択の理由は、成分無調整の一般的な「牛乳」だから。500mlパックなら容器から取り出しやすい深さで、味見にもちょうどいい量である。
なお、この「牛乳」の殺菌時間は72℃で15秒間。これは一般的な高温殺菌と低温殺菌の中間にあたる。前回の実験結果から、高温殺菌牛乳のほうが固まりやすいという前提は留意しておきたい。
クレモリス菌が決め手。粘ってもっちり、フジッコ「カスピ海ヨーグルト」を増やす。

最初に試したのは、フジッコの「カスピ海ヨーグルト®プレーン」である。
カスピ海ヨーグルトといえば、今は商品名として浸透しているが、2000年代初頭に、日本の自家製ヨーグルト文化の土壌を作った存在ということをご存じだろうか。
牛乳パックに少量のヨーグルト(種菌)を加え、常温にひと晩放置するだけという手軽さで、主婦の間に爆発的に広まったことは、妙齢女性なら記憶にあるはずだ。
そんな「カスピ海ヨーグルト®プレーン」の特徴は“ねばり”にある。スプーンを入れて持ち上げると、ぬーーーっとゆっくり落ちてゆく。

なぜなら、このヨーグルトに使われているクレモリス菌FC株(FCとはフジッコ(F)カスピ海(C)の略)は、発酵の過程でEPSという粘性のある多糖体を作り出す。EPSは親水性も高い。そのため、通常のヨーグルトよりねばりがあり、保水力が高いのだ。
また、20℃〜30℃で発酵するため、常温でも失敗しにくい。そこで今回は、ヨーグルトメーカーを27度にセットし、8時間という低温・長めの時間設定にした。
まるで白い「ぐでたま」。菌のチカラで保水力抜群、ねばりもしっかりしたヨーグルトに。
結果、スプーンですくうとツルンと球形に丸まるような、カスピ海ヨーグルト独特のテクスチャーが再現されていた。

乳清はほんのわずか。クレモリス菌は保水力が強いだけでなく、離水を防ぐ力も強いが、自家製ヨーグルトでもその特性は継承されている。
口にすると味わいは濃厚。ほのかな酸味もありつつ、酸っぱいと思うほどではない。これは、増殖に使った牛乳の風味も大きいかと思う。
比較のために、2000年初頭に家でやっていたように、常温で19時間半静置して発酵させてみると、さらにクレモリス菌の特徴がハッキリと出た(13:00~翌8:30。温度18.1℃~15.8℃)。
その様相は白い「ぐでたま」。スプーンですくうと、つるん、コロリと丸っこくまとまり、味わいは極めてマイルド。酸味はより少ないぶん、乳の味が感じられる。
フジッコでは、カスピ海ヨーグルトの食感を「とろぉ~もっち食感」と表現しているが、まさにその食感と、加えた牛乳のマイルドな風味を再現することができた。

フジッコ「カスピ海ヨーグルト®プレーン」
[種菌]クレモリス菌FC株
[商品情報]https://www.caspia.jp/
[加熱温度と時間]1回目:27℃8時間|2回目:約17℃19時間半
[ヨーグルトと牛乳の比率]50g:450g
[再現度]★★★★★
トクホの中のトクホ。隙のない健康訴求ヨーグルト「ナチュレ恵」を増やす。

雪印メグミルクの「ナチュレ 恵 megumi」は、腸内環境の改善に役立つ「特定保健用食品(トクホ)」のヨーグルトだ。
400gのパックには、ガセリ菌SP株(L.ガセリSBT2055)が5億以上、ビフィズス菌SP株(B.ロンガムSBT2928)が10億以上。1パックあたりの菌の数を莫大な数字で示されると、口にするだけで身体が活性化しそうに思えてくる。
雪印メグミルクの公式サイトによると、ガセリ菌SP株は「日本人のおなかに棲んでいるヒト由来の乳酸菌」で、胃酸など消化液の影響を受けにくいため、生きたまま腸に届くとのこと。
さらに、ビフィズス菌も加えており、スキのない健康訴求を感じる。こうしたものが圧倒的に廉価な価格で全国のスーパーに並ぶのだから、大手乳業メーカーの努力は計り知れない。

その味わいは、酸味と乳製品のまろやかさのバランスがとれた、王道のプレーンヨーグルトそのもの。昨今は酸味の少ないヨーグルトも多いなか、酸味こそヨーグルトの印象を決める大切な味の骨子だと気づかされる。
舌触りは若干粉っぽい印象もあるが、ジャムやシリアルを加えれば気になるものではない。さて、このヨーグルトをベースに牛乳を加え、ガセリ菌(乳酸菌)にちょうどよさそうな40℃、6時間にセットしたものを開けてみると…。
牛乳の風味がしっかり。酸味が少なく、ミルク感のあるヨーグルトに。

かなり味が変わっていた。「ナチュレ 恵 megumi」らしい酸味はかなりまろやかになり、増殖に使った牛乳の風味がでている。質感はとろとろに近い。もしかすると、さらに1時間加熱を延長したほうがしっかり固まったかもしれない。
なお、ガセリ菌はヒト由来の乳酸菌なので、保温によって生き延びたと考えられるが、ビフィズス菌は酸素に触れると死んでしまう偏性嫌気性である。そのため、後者は種菌のヨーグルトと牛乳を撹拌し、数時間放置する過程でほぼ死滅してしまったのではないかと思われる。
食味の大きな変化と、「ナチュレ 恵 megumi」が持つ健康効果を鑑みると、この商品は自家培養はせず、市販の製品をそのまま食べることに意味があると感じた。
雪印メグミルク「ナチュレ 恵 megumi」
[種菌]ガセリ菌SP株(L.ガセリSBT2055)、ビフィズス菌SP株(B.ロンガムSBT2928)
[商品情報]https://www.meg-snow.com/products/detail.php?p=megumi
[増殖時の加熱温度と時間]40℃ 6時間
[ヨーグルトと牛乳の比率]50g:450g
[再現度]★(牛乳の味が全面に出て酸味が消えた。ビフィズス菌は増えない)

