ヨーグルトの使い方は、ヨーグルト先進国の人々に訊け!このシリーズでは、日本に住む各国出身のみなさんに、ヨーグルト料理や知られざるヨーグルトの活用法を教わります。
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「ヨーグルトで有名な国はどこ?」
こう質問されたら、多くの日本人は「ブルガリア?」と答えるのではないでしょうか。理由は、言うまでもありませんね。『明治ブルガリアヨーグルト』です。
事実、『明治ブルガリアヨーグルト』は、ブルガリアから乳酸菌を輸入してつくられた日本初のプレーンヨーグルト。ブルガリアの国名を冠して発売されたのは1973年で、今もブルガリアの乳酸菌を使って生乳を発酵させているのだそう。
以来、半世紀にわたり全国津々浦々のスーパーの店頭に並び続けているのですから、日本人にとって「ヨーグルトのふるさと」はブルガリアといっても過言ではない気がします。
第1回は、日本人にプレーンヨーグルトの味わいを教えてくれたブルガリアに敬意を表し、ブルガリア出身のリュードミラ・コストヴァ・吉田さんのご自宅にうかがい、日本でも再現できる、ヨーグルトを使ったブルガリア料理を教わってきました。
モスクワ留学が縁で日本人と結婚。ブルガリアの首都ソフィアから日本へ。
「呼びにくいのでリューシーと呼んでください」と、にこやかに出迎えてくれたリュードミラ・コストヴァ・吉田さん(以下、リューシーさん)は、バルカン半島の中心、ブルガリアの首都ソフィア出身。ソフィアはヨーロッパ最古の都市のひとつといわれ、古代にはアドリア海、中央ヨーロッパ、黒海、エーゲ海を結ぶ交易路として栄えた美しい都です。
遠く離れた日本との接点は、ロシアに留学していたときのこと。当時モスクワ大学へ留学していた日本人男性と知り合い、仲良くなったのが今の旦那さまだったのだそう。
そこから縁あってご結婚され、日本で暮らして35年。現在はご自宅でブルガリア料理教室を不定期で開催しており、作りやすく、食べやすいブルガリア料理にファンも少なくありません。
そんなリューシーさんのご自宅は、一歩足を踏み入れるとブルガリアの華やかな刺繍と、アジアの骨董品が絶妙に調和した素敵な空間。聞けば、以前はブルガリア刺繍も教えており、玄関やリビングには精緻で美しい刺繍の数々が飾られていました。
この日教えていただいた料理は、バニツァ、ピレシカスパ、スネジャンカ、ヤイツァ・ポ・パナギュルスキ。もはや日本人には聞き慣れない単語しかありませんが、「どれもカンタンにできますよ!」とリューシーさん。その言葉を信じて、人生初のブルガリア料理を習ってきました。
焼きたての香りがたまらない!チーズの爽やかさがクセになるブルガリアのチーズパイ「バニツァ」
まず1品目は、ブルガリア人なら誰でも知っているパイ料理、バニツァ(Баница|Banitsa)です。
バニツァとは、薄く伸ばした生地を何層にも重ねて具を挟んだパイ料理のこと。バルカン半島全域で食べられているブーレック(Burek)の一種と言われており、店によってさまざまな形、厚み、具があるそう。
「朝ごはんやおやつに食べることが多く、バニツァと飲むヨーグルトは定番の組み合わせです。ワインと一緒に食べてもいいですよ。焼きたてが一番おいしいです」
売店のバニッツァもいいけれど、天板いっぱいに焼きがったバニツァをみんなで囲むのはもっといい! さっそく作り方を教えていただきます。
バニツァ(ブルガリアのチーズパイ)
分量:6人分(天板1枚分)
- 冷凍パイシート(4枚入り):1パック(使う前に自然解凍しておく)
- 卵:3個
- プレーンヨーグルト:50g
- 小麦粉:大さじ2杯
- ピザ用チーズ:100g
- クリームチーズ『Kiri(キリ)』:100g(個包装4個)
- フェタチーズ:100g
- ベーキングパウダー:5g
1. プレーンヨーグルトにベーキングパウダーを入れて混ぜる。
最初に用意するのは、バニツァのフィリング(具)です。主材料はヨーグルトとチーズ。ふっくらと焼きがるよう、フィリングに使うヨーグルトにもベーキングパウダーを混ぜます。
2. 溶き卵、小麦粉、チーズを入れて混ぜる。
1に溶き卵と小麦粉を加えて混ぜ、ピザ用チーズと、フォークで潰したフェタチーズを入れて混ぜます。
「チーズは何種類か合わせたほうがおすすめです。特にブルガリアで欠かせないのが白いチーズ『シレネ』ですね」とリューシーさん。サワークリームのような風味が持ち味で、バニツァに爽やかなコクを加えてくれます。日本では手に入らないので、代替品にはよく似たフェタチーズがおすすめ。
混ぜ終わったら、大さじ3杯分はパイの上に塗るため、別の器にとっておきます。
3. パイ生地を1枚ずつ、麺棒で薄く伸ばす。
元来、バニツァはフィロ(Filo)という、紙のように薄い生地を使いますが、これまた日本では手に入りにくいため、リューシーさんは冷凍パイシートでアレンジ。「ブルガリア人が食べたらちょっと違うと思うけど、簡単でおいしいバニツァができます」。
あらかじめ解凍しておいたパイシートは、麺棒で伸ばすとみるみる約2倍の長さに。フィロをイメージしながら、薄く軽やかな生地に整えます。
4. パイ生地の上に、フィリングとクリームチーズをのせて巻く。
フィリングとパイの準備ができたら、いよいよ成形。生地とフィリングをひとつにまとめ、バニツァらしい形が見える工程に入ります。
まずは伸ばしたパイ生地1枚につき、フィリングの4分の1の量をのせ、その上に約2cm角に切ったクリームチーズを散らします。クリームチーズは塊で入れたほうが味のアクセントになるので、適度な存在感を持たせるのがおすすめ。
フィリングをのせ終わったら、パイ生地でぐるりと包み、4本順番に巻いていきます。イメージとしては、海苔の上にごはんを広げて具をのせる、海苔巻きづくりに似ていますね。
5. フィリングを巻いたパイ生地を渦巻状に丸め、パイ皿に詰める。
続いてはバニツァの形づくり。4でフィリングを巻いたパイ生地を、端からくるりと渦巻状に丸めます。2つ目からは、パイ生地の端を繋げてパイ皿の上におくだけでOK。生地同士を密着させる必要はなく、4つを繋げて、大きな渦巻状に整えます。
6. つや出しも兼ねて、表面にフィリングを塗り、180~190℃に余熱したオーブンで40~45分焼く。
最後に、取り分けておいた大さじ3杯のフィリングをパイの上に塗ったら仕込みは完了!
180~190℃にあらかじめ温めたオーブンで、40分~45分間じっくりと焼き上がりを待ちます。
オーブンでバニツァを焼いている間に、スープやサラダを準備します。次につくるのは、ブルガリアで二日酔いに効くといわれる鶏肉のスープです。ヨーグルトの使い道は「つなぎ」だそう。しかし「つなぎ」とはいったい…?