こんにちは。サトタカです。2023年1月のオープン以来、羊肉好きな人々から熱視線を集めているレストランがあります。神楽坂にある「草原の料理 スヨリト」。ご存じでしょうか?
ここはともかく羊がおいしい。モモ肉やスペアリブなど、肉としてのメジャーな部位はもちろん、頭、骨、胃、腎臓、キ〇タマまで、羊のすべてを味わえます。部位別に調理した羊肉のおいしさもさることながら、内モンゴルに特注した炭火焼き専用窯で焼き上げた、羊の丸焼きといったら…。瑞々しくて香ばしくて、こんなおいしい羊の丸焼き、食べたことがない!
![店は3階建て。1階はカウンター、2階はテーブル、3階(写真)は貸切にぴったりの内モンゴル草原ペインティングルーム。](/wp/wp-content/uploads/2023/03/img_sato_tonarigohan02_01.jpg)
店主のスヨリトさんは、中国の内モンゴル自治区ウランホトの羊飼いの息子。聞けば、初めて羊を捌いたのは14歳。初めて1人で丸焼きを焼いたのは18歳。そう、彼は羊に囲まれて生まれ、羊とともに育った羊のエリートなのです。
ではなぜ、ヨーグルトのウェブメディアにモンゴル族の羊肉料理店を紹介するかって? それは、モンゴル族の羊肉の仕込みにヨーグルトがなくてはならない存在だからです。
こんなところにヨーグルト!?「スヨリト」の炭火焼ラムのおいしさの秘密
「スヨリト」で、あいさつ代わりのお通しといえば、ラムショルダー(肩肉)の炭火焼。
炭火焼というと、塩、胡椒、焼く!とシンプルなイメージがあるかもしれませんが、スヨリトさんは、モンゴル族の伝統的な手法で、ショルダーに適した下ごらえをします。そこに使われるのがホエイです。
![ヨーグルトの容器を傾けると、乳白色のホエイ(乳清)がでてきます。](/wp/wp-content/uploads/2023/03/img_sato_tonarigohan02_02.jpg)
![カットしたショルダーにホエイを揉み込みます。ボウルの中には玉ねぎも。](/wp/wp-content/uploads/2023/03/img_sato_tonarigohan02_03.jpg)
ホエイとは、牛乳からヨーグルトやチーズを作るときに乳液から分離された乳清のこと。わかりやすいところでは、ヨーグルトのふたを開けたときに見える上澄みの液体がホエイです。しかしなぜ、わざわざヨーグルトからホエイを取り出して使うのでしょうか?
「ショルダーは肉が硬い部位なので、ホエイを使います。ホエイを入れて軽く肉に揉み込み、2時間ほどおくと、肉が軟らかくなるのです」
![スペアリブを漬けるヨーグルトを調味するスヨリトさん。](/wp/wp-content/uploads/2023/03/img_sato_tonarigohan02_04.jpg)
それもそのはず、ホエイは肉のたんぱく質を分解する酵素・プロテアーゼが含まれる食材。肉を軟らかくするだけでなく、保水性を高めるはたらきもあります。今や科学的に証明されていることではありますが、それを知る以前から、モンゴル族にはこうした知恵が伝わっているのですよね。
そして、「スヨリト」に来たら必ず注文してほしいのがスペアリブの炭火焼です。この部位は、濃縮したうまみが感じられるショルダーとは異なり、口に入れると、脂ののったスペアリブのジューシーなうまみと香りがブワッと広がり、口の中から感動を呼びます。
そんなスペアリブの下ごしらえに使われているのがヨーグルトです。こちらは串を打ってから、ヨーグルト、全卵、塩、片栗粉を合わせたペーストをたっぷり塗布。30分寝かせたら、ペーストを落とさず炭火でじっくりと加熱します。しかし、なぜスペアリブはヨーグルトなの?
その問いに、「スペアリブはショルダーほど硬くないからです」とスヨリトさん。ホエイのほうが肉を軟らかくする効果が高い一方、ヨーグルトも同様のはたらきがあるということですね。話を聞きながら焼き場を見ると、肉の焼ける香りがぷうん。うう、これはたまらない…!
![ヨーグルト、全卵、塩、片栗粉を合わせた衣をたっぷりと塗ったスペアリブ串。](/wp/wp-content/uploads/2023/03/img_sato_tonarigohan02_05.jpg)
![焼きはじめはヨーグルトのコーティングがしっかりと見えます。](/wp/wp-content/uploads/2023/03/img_sato_tonarigohan02_06.jpg)
![香りが飛ばないよう、焼き上がる少し前にスパイスを振ります。おいしそうでしかない。](/wp/wp-content/uploads/2023/03/img_sato_tonarigohan02_07.jpg)
また、味付けがいいんです。ホエイに漬けたショルダーは、黒胡椒のドライ&ウッディな辛さが決め手。
「粗挽きの黒胡椒は食感と香りがよく、細挽きの胡椒は肉に密着します。炭火で焼いたとき、粗挽きは焼け切らず、細挽きは焼け切ります。そんなバランスを大事にしています」
なるほど、黒胡椒を挽き分けるなんて考えたこともなかった…!
![粗挽き、中挽き、細挽きの3種類に挽き分けた黒胡椒。](/wp/wp-content/uploads/2023/03/img_sato_tonarigohan02_08.jpg)
一方、ヨーグルトに漬けたショルダーは、ゴマ、クミン、唐辛子をかけた香ばしくスパイシーな辛さが持ち味です。
どっさりかけるのではなく、羊肉の持ち味を生かした控えめなスパイス使いがスヨリトさんのこだわり。これがまた、もう1本、また1本と無限に食べられそうになるから危険。いやけしからん。ショルダー串はお通しで出されますが、改めて注文したくなってしまいます。
![ショルダーには、脂のおいしさを引き立てる複数のスパイスを合わせて。](/wp/wp-content/uploads/2023/03/img_sato_tonarigohan02_09.jpg)
![スヨリトさんの串焼き。この姿を見るなら、1階のカウンター席へ!](/wp/wp-content/uploads/2023/03/img_sato_tonarigohan02_10.jpg)
このように、「スヨリト」では、看板料理の羊肉串にヨーグルトを活用しています。
ですが、それだけではありません。調味料としてヨーグルトを使っている料理もあるんです。
それはケバブ。ケバブといっても内モンゴルテイストとなると、いったいどんな味わいなのでしょうか。