日本のプレーンヨーグルト市場をけん引してきた「明治ブルガリアヨーグルト」は、2024年で発売50年。この半世紀、ヨーグルトを取り巻く日本の料理トレンドはどのように変遷してきたのでしょうか。
5月15日の「ヨーグルトの日」に発表した「ヨーグルト白書2024」から、作家・生活史研究家で、くらし文化研究所を主宰する阿古真理さんのコラムをご紹介します。
1973年、日本初のプレーンヨーグルトが誕生。朝食やデザートとしての食習慣が定着
世界各国の食を体験できた1970年の大阪万博をきっかけに、日本では海外の食文化への意識が少しずつ高まり、それまで見たことのない食材や料理が次々と入ってきました。
その3年後の1973年に「明治ブルガリアヨーグルト」が誕生。それから50年を経て、ヨーグルトは日本人の食生活にすっかり馴染んでいます。
日本人は、古来、外国の文化を受け入れながら多様な食文化を築いてきましたが、ヨーグルトもそのひとつ。プレーンヨーグルトが身近で手に入るようになると、その爽やかな味わいがフルーツや蜂蜜などと相性がいいことから、主に朝食やデザートでの需要が高まって「ヨーグルト=朝食とデザートに使う」という食べ方が定着しました。
現に、製品としてもフルーツソースなどを加えたヨーグルトのバリエーションは幅広く、デザートレシピも多く出回っています。
2000年以降、海外旅行やレシピ本によってヨーグルトの料理活用が浸透
インド料理のタンドリーチキンやトルコ料理のサラダソースなどでヨーグルトが活躍していることが分かると、「ヨーグルトは甘くして食べる」という固定概念を離れて新しい使い方をする人も出てきました。
また、2000年以降はヨーグルトを料理に活用する料理家も現れ、「塩ヨーグルト」「水切りヨーグルト」などのキーワードでレシピ本が何冊も発行されています。乳のコクと程よい酸味があり、臭みを取る、肉を柔らかくするなどの 調理効果があることから、ヨーグルトの新たな側面に光が当たってきたのです。
ヨーグルトが健康に寄与しているということは、ブルガリア人の長寿について研究したウクライナの免疫学者イリヤ ・メチニコフ博士が唱えた「不老長寿説」を通じて、100年も前から世界的に知られるようになっていましたが、この頃はテレビの人気情報番組などの影響や、食事で体を調える「健康ブーム」が繰り返し起こった時期でもあり、 ヨーグルトはその筆頭だったのです。
2024年現在、ヨーグルトの食べ方はさらに多様化。世界のヨーグルトとの出合いも
「ヨーグルトを料理に使う」と聞いても、ピンとこない方はまだまだ多いかもしれません。けれど、もともと味噌や醤油といった発酵調味料を日常的に使い、それが体に良い影響を与えているということを知る日本人にとって、もしかするとヨーグルトは意外と使いやすい調味料になるかもしれません。
そして、現在の日本では、ありがたいことに世界各地の料理を楽しむことができます。今は、世界の料理レシピも手軽に手に入れる時代。世界のヨーグルト料理で新しいおいしさに出合う人もいるでしょう。
また、肉の旨味を増すなどヨーグルトが調理に及ぼす作用が分かれば、この食材の可能性がまだたくさんあることに気づくかもしれません。朝食だけでなく、新しい食べ方でヨーグルト体験を増やしてみてください。
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